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2018 Fiscal Year Research-status Report

わが国における異年齢の保育の実践史的研究

Research Project

Project/Area Number 16K04577
Research InstitutionBukkyo University

Principal Investigator

渡邉 保博  佛教大学, 社会福祉学部, 教授 (50141552)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2020-03-31
Keywords異年齢保育 / 学級 / 年齢別 / 昼間のお家 / 場 / 学校化 / 生活状況 / 特別視
Outline of Annual Research Achievements

1.基礎的な検討作業として,保育所という場(「お家」「学校」「遊び場」)のあり方に関する先行研究の検討を進めた。具体的には,①保育の「学校化」に言及した内外の先行研究を検討した。その中で,保育の「学校化」は「方法」原理の違い,あるいは「場」の原理(「生活の場」「昼間のお家」)の違いに注目して論じられることが多いが,これらの原理は必ずしも両者の違いを示す規準にはならないことがわかった。というのは,社会的な背景や保育者の教育意識等に影響され,「学校システムのアプロ-チ(教室の構造,カリキュラム,教授法,子どもとスタッフの比率,子ども期に関する概念など)によって変容を迫るような圧力がかかり,学校教育における伝統的な目的や慣習が保育領域にもたらされる」(大野2017,Kaga et.al.2010/Moss&Bennette2006)ことがあるからである。また,保育所と同様に学校も「生活の場」「家」として位置づけられてきた歴史があったからである。さらに,両者の原理的な違いに関する検討を進め,「保育が福祉,保健,その他の関連領域から分離する」(Bennett, J. & Kaga, Y. 2010)ところに「学校化」の問題があると考えた。同時に,近年の学校(論)研究によって学校システムの原理的な検討を行い,福祉施設としての保育所と学校システムとの原理的な差異をとらえる視点(「生活状況に応じる」:「みんな同じ」「特別視しない」)をうることができた。
2.この成果をふまえ,「保育所は学校ではない,生活の場である」という観点を深めながら,異年齢保育を含む保育のあり方を模索していった保育園に注目し,資史料(園の中間総括や年度末総括,実践記録,クラスだよりや園だより,職員会議録や事務連絡,職員・保護者アンケート,記念誌,対外的な実践報告等)を収集・整理し,その内容の検討に着手することができた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

①昨年度に続き,学校・保育所・幼稚園の学年制と「縦割り」編成の歴史を検討するための研究視点の精査が必要であった。先行研究のレビューをとおして,異年齢保育の実践史を,単なる保育の方法・形態の歴史としてとらえるのではなく,保育所・幼稚園という「場」の認識と結び付けて,検討すべきではないかということが見えてきた。これは本研究の基本的な視点であり,その妥当性を吟味するのにかなりの時間を要した。
②また,保育所という「場」のあり方は学校との関係で問題になってきた。その点で,保育の「学校化」に関する内外の研究の検討も不可欠であった。欧米(スウェーデン,フランス,ドイツ等)における保育と学校との連携・統合,保育課程改定に関する研究が急ピッチで集積されつつあり,一昨年度からその検討に力を注いできた。そのため,研究課題に迫るための基礎作業はさらに進んだと言えるが,その半面で,異年齢保育へ転換した園への訪問と聞き取り調査について,その調査内容の再吟味を行う必要が生じた。また,当初の研究計画について一部見直しを行う必要も出てきた。
③補助期間の初年度(2016)が学部長職の最終年度と重なったため管理業務に専念した。また,同職の任期満了前後に体調を崩したため,2017年度前半はリハビリに重点を置いた生活を余儀なくされ,教員としての職務(授業・実習指導・院生指導など)遂行を中心にした。さらに,2017年末に交通事故で受傷し,入院・治療,その後のリハビリ通院(2018年9月まで)の必要があった。主として以上の理由により,研究の進捗に大幅な遅れが生じた。

Strategy for Future Research Activity

1.わが国の保育実践史を「学校(教育)」との関連で整理した先行研究の検討を,さらに継続する。その中で,「方法」原理や「場」の原理が,保育所(保育)と学校(教育)の基本的な差異を説明しうる原理かどうかについて深める。
2. 学校(論)研究の進展に学びながら,近年,OECD諸国が試みつつある保幼小の制度統合や保育・教育課程改革における「学校化」の問題をとらえる基本的な視点について検討を深めることも,異年齢保育を含む保育所保育の独自性を明らかにしていくうえで重要な課題である。
3.以上の課題を遂行する上で,関連学会・研究会に継続して参加し,情報収集する。
4. 「保育所は学校ではない,生活の場である」という観点を深めながら,異年齢保育を含む保育のあり方を模索していった保育園の実践史料の検討を進め,その保育所観がどういう経緯を経て生まれ,子どもと家族の「生活状況に応じる」保育の模索の中で、その目標・内容・方法・クラス編成・建物と保育空間等のあり方がどう深められていったのかについて検討することが,最も大きな課題である。その際,保育所と学校システムとの原理的な差異をとらえる視点に関連して,この園(の園長)が,「少数者の民主主義」という視点も提起していることに注目したい。学校システムが「みんな同じ」「特別視しない」という原理に依拠しているとするなら、「少数者の民主主義」という視点はそれに対抗する原理的な視点ともいえる。この視点の形成過程にも留意しながら,同園の実践史料を読みといていくことによって,保育の「学校化」に対抗しうる何らかの手がかりを得ていくことも課題である。
5.以上の成果を論稿にまとめ、学会誌などに投稿する。

Causes of Carryover

(次年度使用額が生じた理由)基礎研究の進展に伴って、当初計画していた異年齢保育実施園への聞き取り調査について再検討する必要が生じたこと、新たな観点から先行研究の収集と検討に重点を置いたこと、また心身の不調及び交通事故による受傷に伴い治療・リハビリに専念しなければならない状況が長期間続いたことにより、予定していた予算の執行を変更せざるを得なかった。そのために旅費及び人件費・謝金の執行が予定額より大幅に少なくなり、50万円強の次年度使用額が生じた。
(使用計画)調査内容の再吟味を行い、当初の研究計画を一部変更して聞き取り調査を行うと共に、基礎研究を経て明確になりつつある研究視点(「昼間のお家」「生活状況に応じる」「少数者の民主主義」という福祉としての保育の「場」認識)も生かしながら,異年齢保育を含む保育の実践史料の収集と分析をさらに進めることによって、平成31年度助成金(前記の次年度使用額)を適正に執行する。

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Published: 2019-12-27  

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