2018 Fiscal Year Research-status Report
ブラジル人の子どもの教育を支える保護者-教師・学校関係についての実践的研究
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16K04600
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
新藤 慶 群馬大学, 教育学部, 准教授 (80455047)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野崎 剛毅 札幌国際大学短期大学部, 幼児教育保育学科, 准教授 (50412911)
濱田 国佑 駒澤大学, 文学部, 准教授 (50634523)
上山 浩次郎 北海道大学, 教育学研究院, 助教 (60751089)
小野寺 理佳 名寄市立大学, 保健福祉学部, 教授 (80185660)
品川 ひろみ 札幌国際大学, 人文学部, 教授 (80389650)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 在日ブラジル人 / 保護者 / 教師 / 保育者 / 公立学校 / 公立保育所 / ブラジル人学校 / 家庭と学校の連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、これまでに行った調査結果の分析を進めた。 (1)公立学校における調査からは、第1に、ブラジル人児童生徒と保護者ではポルトガル語と日本語のいずれが得意かが重なっていた。そのため、お互いが得意な言語でコミュニケーションが営まれていた。また第2に、ブラジル人親子は、子どもが日本で進学や就職することを望んでいた。その結果、親子とも子どもの成績や進路という学業に関する悩みを抱えていた。さらに第3に、教師の側も、「日本で暮らすなら、日本の学校がいい」という考えを持っており、ブラジル人親子の希望と重なっていた。しかし、第4に、教師の働きかけは日本の学校文化に基づくものであり、ブラジル人親子への働きかけの難しさに、日本語指導助手の手を借りて何とか対処している状況であった。 (2)ブラジル人学校調査からは、第1に、保護者たちは、帰国か残留かという観点でブラジル人学校を評価してはいなかった。むしろ、コミュニケーションを重視し、ポルトガル語で対応してもらえる教育機関としてブラジル人人学校を評価していた。また第2に、ブラジル人学校教員は、保護者の教育への関心の低さを指摘していた。しかし、保護者の多くは高卒以下の学歴であり、大学進学への道筋についての知識が十分ではない。とりわけ、出身国ではない日本での大学進学について、保護者は見通しが持てないでいた。 (3)公立保育所の調査からは、第1に、ブラジル人保護者の定住志向の強まりと、それに伴う日本式保育の受容が見られた。また、第2に、保育士の側にも外国につながる児童を許容する意識も持たれていた。ただし、そのことが外国につながる児童への配慮には必ずしもつながっていなかった。そのため、第3に、今後、保護者と保育士の間に存在しうる「ギャップ」が表面化し、その克服が必要となる可能性が見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実態調査の結果の取りまとめがほぼ終わり、今後の実践の計画策定に向けて足がかりができた。現在、調査結果の報告書作成を進めており、この報告書を用いて調査対象者に向けて説明会を開きつつ、具体的な実践の提案と検討作業に入っていく基盤を築くことができたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、第3段階に位置づけた、実態調査をふまえた具体的な取り組みの構想を早期に完成させる。これまでの調査では、いずれの保護者も、子どもを日本で進学・就職させるという希望を持っていた。しかし、保護者たちの多くは高校までの進学経験しか持たず、しかも日本での進学状況について十分な情報を持ち合わせていない。一方、教師や保育者の側は、そうした保護者の希望や課題について、詳細に把握する機会を持つことが難しい。そこで、保護者と教師・保育者の側の両者の連携を十全に進められるような取り組みを構想していく。 さらに、第4段階に位置づけた取り組みの実践を行い、実践の成果の検証を行うべく調査を実施する。調査は、2016年度に行った保護者、教師・保育者、子どもを対象として実施する。この成果を、調査協力者と確認しながら、より一般化した形で、他の事例でも応用できるよう知見を取りまとめ、学会発表や論文等を通じて発表していく。
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Causes of Carryover |
2018年度に学会発表を行った調査結果を、報告書として刊行する予定であり、その分を支出する予定を立てていた。しかし、報告書の刊行が2018年度中にできなかったため、2019年度はその報告書の作成費として次年度使用額を充てる計画である。
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Research Products
(4 results)