2018 Fiscal Year Research-status Report
ユマニチュードを用いた「対話的保育のための行動指針」の作成
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16K04601
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
小田倉 泉 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (10431727)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ユマニチュード / 子ども尊重 / 「待つ」こと / 「待たれる」こと |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ユマニチュードのケア行動における「対話的」特性が、保育者の行動特性にどのように表れているかを、児童発達支援の場において検証した。今年度の研究のフィールドとした児童発達支援の実践現場は、子どもとの対話的関係性を重視し実践し、且つ効果を上げている。研究フィールドとした児童発達支援センターにおいて、保育者、保護者の承諾を得た上で、1対1の個別指導の場面における保育者の行動をビデオで記録し、映像記録を下に検証した。本調査ではレット症候群のお子さんに協力頂いた。レット症候群は、主に女児に発症し、多彩な神経症状が年齢依存性に出現する遺伝子を原因とする神経発達障害である。以前は出来ていた運動機能・言語機能を喪失する退行現象がみられ、言語によるコミュニケーションが困難であると考えられている。 本調査において、保育者の行動特性を検証した結果、保育者は幼児の自己決定、意志の表出の為に時間をかけて「待つ」ことを繰り返していることが顕著に見出された。この特性を検討、考察した結果、「待つ」ことは、「待つ」側にとってはいつまで待つのか分からない不確実さの中で、その不確実さに堪えつつ、子どもへの信頼と尊重の意識を継続するという能動的行為であり、「待たれる」こととは、保育者からの注目を感じ続けることであると共に、「待たれる」に足る自己存在の価値を内在化していくことであることが示された。 「待つ」行為は、ユマニチュードの基本行動には無いが、ケアに入る際の行動として示された手順には、「待つ」行動が指示されている。ユマニチュードの技術においても「待つ」行動によって、患者は自分の意志が尊重されたという心地良い感情記憶を定着させるということが示されている。「待つ」行動を能動的行為として、子ども尊重の具体的方法として意識することの必要性が示されたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
調査対象が障害をもつお子さんであるため、対象園のすべての保護者から録画の承諾を得られなかったこと、個別指導が月に1回であるが日程が流動的であるため、録画の機会が十分に得られなかったことなどから、研究に必要な調査内容の収集が予定通りに進まなかったことが主たる要因である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度と同じフィールドで調査を継続する。継続することで、保護者の方からの協力も得られ易くなっていくことが予想される。また本年度協力下さったご家族から継続して調査対象となって頂ける内諾を既に得ているため、研究のスピードアップが図れると考えている。
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Causes of Carryover |
前年度の研究が、調査先との日程調整が予想外に困難であったことと、この為に予定していた調査の進展が遅れたため、当初計画の執行ができず、次年度使用額が大幅に生じてしまった。 次年度使用計画 出張費・・30万円、調査経費・・20万円、物品費・・20万円、人件費・・10万円、印刷費・・14万円
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