2018 Fiscal Year Research-status Report
排除型社会における包摂的学校文化の醸成に関する研究-就学前教育と義務教育を中心に
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16K04623
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
酒井 朗 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (90211929)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 秀樹 東京学芸大学, 教育学部, 講師 (80712075)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 包摂的学校文化 / 指導方法 / 構成的実践 / 生活 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、包摂的文化を醸成していくための指導方法上の鍵は、子どもの生活全体の理解をふまえることにあることを確認し、幼児教育と小学校教育において子どもの生活がどのように位置づけられているのかを以下の3点の分析に基づき検討した。 第一に、子どもの生活をふまえた教育に関し、幼児教育と小学校教育では歴史的にどのような議論がなされてきたのかを整理した。第二に、各機関の要領・指針と解説において、子どもの生活がどのような形で記述され、教育活動とどのような関係に位置づけられているのかを、「生活」の言葉に着目して分析した。第三に、各学校・園の管理職へのインタビュー調査や各種の資料収集により、各機関での実際の教育場面において子どもの生活がどのように考慮されたり、あるいは考慮されずに教育活動が進められていくのかについて検討した。 分析の結果、以下の諸点が明らかにされた。幼稚園教育要領においては、生活は指導内容であるとともに教育方法でもある。そこでは幼児にふさわしい生活を送ることや子どもの生活に配慮することが求められている。こうした要領のもとで、幼稚園では子どもの生活に教師が関わって育てていくものと捉えられ、家庭はそのための背景だと捉えられている。小学校の学習指導要領での生活は、指導内容として意味づけられることが多い。こうした小学校学習指導要領での生活の意味づけに基づいて、実際の小学校現場では、家庭での生活は学校とは別の場面の状況であると捉えられている。 以上の分析結果から、包摂的な学校文化を醸成していくためには教育方法として生活を位置づけることの重要性を指摘した。学校は発達に応じた生活を送ることを組織上の任務と位置づけることにより、子どもの生活に配慮しようとする行為が生まれ、それが個々の子どもの多様なニーズに対応することとなるとも指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究を通じて、包摂的学校文化を醸成してい行く上での課題の焦点化と、指導方法上での手立てに関するヒントを得られた。また、現状の学校教育のプロセスにおいて、多様な困難を抱える子どもたちがどのようにして排除されているのかが浮かび上がってきている。当初予定していた質問紙調査の実施が先送りになっており、次年度に延長して実施する予定である。ただし、研究テーマの追究は順調に進んでおり、その点では研究の成果は確実に上がっていると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、幼児教育から小学校教育への移行期に関する質問紙調査の実施を、いくつかの自治体ならびに学校の協力を仰ぎ実施していく予定である。具体的には東京都練馬区、神奈川県相模原市などとの連携を想定している。 また、最終年度になるため、研究成果を総括し、知見の整理と課題を検討する。
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Causes of Carryover |
質問紙調査を実施する準備が遅くなり、次年度に回している。来年度は研究期間を延長しての遂行となるため、ここに記載された額で全額であり、これを予算として研究を遂行する。
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Research Products
(3 results)