2019 Fiscal Year Annual Research Report
A Study on Fostering Inclusive School Culture in the Excluded Society: Focusing on Preschool Education and Compulsory Education
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16K04623
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
酒井 朗 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (90211929)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 秀樹 東京学芸大学, 教育学部, 講師 (80712075)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 就学 / 幼児教育から小学校教育への移行 / 子どもと保護者の生活 / 「綱渡り」の生活 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、幼児教育から小学校教育へと移行することにより、子どもの生活時間や生活の在り方がどのように変化していくのか、保護者の生活はどのように変化するのかを、小学校低学年の子どもを持つ保護者を対象にしたインタビュー調査により解明した。 調査の結果、子どもたちの生活は小学校に入学すると、1日を通して小学校の時間に合わせて起床時間から帰宅時間、就寝時間まで変化していることが分かった。また、幼児教育では、活動の流れの中である程度柔軟に設定されていた時間が、小学校に入ると時間割で区切られようになり、それに合わせて過ごすことが求められていた。さらに帰宅後も、子どもたちは宿題や明日の準備のために慌ただしく過ごしていた。子どもは、この小学校生活の時間にあわせようと努力していたが、そのために苛立つ様子や疲れた様子も見られた。さらに、人間関係の面でも不安や緊張を強いられることが予想された。 保護者は、この時期の子どもの学校生活を支えるため、勤務時間を調整したり学童を利用したり、困った時には祖父母の援助も得ていた。なお、保護者の負担を増やしている1つの要因として、様々な持ち物の準備や宿題の遂行に対し保護者の関与が強く求められていることも浮かび上がった。しかし、教師との距離は幼児教育の時よりも遠くなりがちである。また、子どもが小学校に入ると保護者同士の付き合いも少なくなっていた。 以上の分析に基づいて、小学校教育に就学した後の子どもと保護者の生活は「綱渡り」の生活と表現することができると指摘した。綱渡りとは、細かく区切られた小学校生活の時間に合わせて、子どもと保護者が時間をなんとかやりくりしている様子を指す概念である。したがって、何か問題が生じれば、途端に窮地に追い込まれる。しかも、そのような状況に陥ったときに必要な教師との関係や他の保護者との関係はむしろ希薄になり、サポートを受けにくい。
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