2017 Fiscal Year Research-status Report
レジデンシャル・カレッジの導入と定着にみる中台港澳高等教育改革比較研究
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16K04625
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
山崎 直也 帝京大学, 外国語学部, 准教授 (10404857)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日暮 トモ子 目白大学, 人間学部, 准教授 (70564904)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 書院 / 中国語圏 / 中国 / 台湾 / 香港 / マカオ / 高等教育改革 / 教養教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実施計画に基づき、研究代表者の山崎が台湾とマカオ、研究分担者の日暮が中国と香港を中心に調査を進めた。 2017年7月には、来日したマカオ大学呂志和書院の葉銘泉書院長による講演会を目白大学で実施し、関心を持つ大学の教職員が参加を得て、活発な議論が展開された。同年9月には、山﨑が日本学生支援機構のウェブマガジン『留学交流』に、同講演会で語られたマカオ大学、呂志和書院の事例報告を中心に、中国語圏における書院教育を論じた論考を発表した。2018年1月末から2月頭には、山崎がマカオ大学を訪れ、マカオ研究について、多くの貴重な資料を所蔵する大学図書館で文献調査を行い、この成果を踏まえて、同年3月にアジア教育学会の研究例会で研究発表を行った。また、このマカオ大学滞在中、香港で研究代表者の日暮と合流、中国語圏における書院教育の先駆である香港中文大学を訪問し、同大学で通識教育(general education)を統括する梁美儀教授と意見交換を行うとともに、今後のさらなる調査に向けて、確かな下地を作った。 2018年1月には、山崎が台湾で調査を実施した。医学大学として書院教育を行う高雄医学大学での調査は実現しなかったが、台湾南部の義守大学、文藻外語大学、淡江大学で意見交換と文献調査を行う一方、清朝時代の伝統教育機関としての本来の意味の書院を再建した鳳儀書院(高雄市)を訪れ、台湾、ひいては中国語圏において、「書院」という言葉の含意について、より明確なイメージを持つとともに、今日の大学教育改革に、この言葉が「召喚」されている意味を深く考えるに至った。 2018年3月には、山崎と日暮の2名で、中国上海の華東師範大学、復旦大学を訪問し、前者では教員養成に特化した特色のある書院、後者では中国語で他に先がけて実施された大規模な書院の歴史と現状について、多くの貴重な情報を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画段階で予定していた定例研究会の開催には至らなかったが、2017年7月には、マカオ大学呂志和書院の葉銘泉院長の講演会を実施、その内容をウェブマガジン『留学交流』で発表することができた。また、書院教育制の調査に端を発する同大学との交流は、研究交流から教育交流にまで拡大し、同大学と研究代表者の山崎が所属する帝京大学との間で、双方向の短期学生派遣が制度化するという本研究の趣旨に照らして望ましい副産物がもたらされている。 口頭研究発表では、山崎が2018年3月にアジア教育学会の研究例会でマカオの高等教育に関する発表を行ったが、先駆的な内容であるとして一定の評価を得た。2017年8月には、日暮が日本教育学会第76回大会で中国調査の内容をまとめた報告を行い、こちらも活発な議論が展開されている。また、山崎は同年5月の日本台湾学会第19回学術大会でも、研究発表を行っている。 本年度は、山崎が台湾、マカオ、香港、中国、日暮が香港、中国で現地調査を行い、今後の展開に向けて多くの種をまくことができた。初年度で十分なコネクションが構築できなかった香港だが、同地における書院教育の最も重要な担い手である香港中文大学にルートを開くことができた。中国については、初年度に得た西安交通大学との繋がりをテコとして、華東師範大学、復旦大学との間に新たにコネクションを確立した。これらの大学は、それ自身活発な書院教育を実施しているだけでなく、書院教育に関するリージョナルなネットワークの要の役割を担っており、今後研究を加速する上で大きな助けになると考えられる。台湾については、同地で書院教育を研究する淡江大学教育学院の薛雅慈副教授(2016年に日本に招聘)との間で引き続き研究交流を行った。薛雅慈副教授には、最終年度に実施するシンポジウムでの報告を依頼している。
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Strategy for Future Research Activity |
3年計画の2年目となる平成29年度は、研究代表者、研究分担者ともに活発に現地調査を行い、いくつかの学会で口頭発表を行うとともに、マカオの事例について論考を発表することもできた。 最終年度となる平成30年度は、引き続き中国・台湾・香港・マカオで現地調査を実施し、その成果を口頭および活字で発表するとともに、以下のような研究活動を予定している。 2018年7月には、マカオ大学呂志和書院から葉銘泉書院長、レジデンシャルフェローの鄭揚宜氏と学生6名の訪問団の受け入れを行う。滞在中の日程は調整中だが、前年度葉書院長の講演会を実施したことを踏まえて、今回は学生目線で書院教育の効能を語ってもらう公開研究会を開催することを検討している。 また、同7月末から8月頭にかけて、華東師範大学孟憲承書院から呉薇書院長率いる視察団の受け入れを行う。2016年度に台湾から2名の大学教員を日本に招き、東京大学、早稲田大学、京都大学、京都産業大学で学生寮と教養教育に関する調査を実施したが、これに習って首都圏および関西圏のいくつかの大学を訪問し、視察と聞き取り調査を行う予定である。また、2018年3月に山崎、日暮が華東師範大学孟憲承書院を訪問した際、呉薇書院長から聞き取りした同書院の「ライフストーリー」が非常に興味深いものであったことを鑑みて、訪問団の日本滞在中、何らかの公開企画を行うことを考えている。 2018年9月には、一橋大学で開催される日本国際教育学会第29回大会で、本科研の成果発表を課題研究として行う。台湾の淡江大学から薛雅慈副教授、中国の江蘇大学から史媛媛講師を演者として招聘し、山崎が司会、日暮がコメンテータを担当する。また、同年6月の日本比較教育学会第54回大会(広島大学)では、山崎が台湾、日暮が香港について、本課題と関わる内容の研究発表を行うことになっている。
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Causes of Carryover |
マカオ大学からの招聘、山崎のマカオ現地調査が双方の大学の自己資金で行われたこと、山崎の香港現地調査がそのマカオ現地調査に含める形で行われたこと、台湾現地調査の期間が予定より短くなったこと、各現地調査における支出が予想よりも安価に済んだことが重なって次年度使用額が生じた。最終年度となる2018年度は、日本国際教育学会第29回大会に台湾と中国から講演者を招聘し、課題研究として本科研の成果を発表する予定であるため、そのための交通費、宿泊費、日当、通訳料として使用の予定である。
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Research Products
(7 results)