2018 Fiscal Year Research-status Report
英国の中等・高等教育接続改革と学生の変容に関する基礎的調査研究
Project/Area Number |
16K04629
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
沖 清豪 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70267433)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | A-level試験 / Ofqual / 高大接続改革 / 異議申し立て / 質保証 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は4年計画でイングランドにおいて進行中の高大接続改革(GCE A-level試験改革)動向とそれが中等教育機関や試験実施機関、および高等教育機関側に与えている影響について継続的に調査し、その社会的背景を明らかにするとともに、日本で進行中の高大接続改革への示唆を得ようとするものである。本年度は計画の3年目として、英国内での改革動向と生じた課題を整理し、日本の高校改革との関連でも検討を進めた。 第一に、イングランド資格・試験規則局(Ofqual)の報告書や基礎データに基づき、2017/18年度に焦点をあててA-level試験の特徴とOfqual自体の機能について検討した。その結果、新たなA-level試験制度に対して肯定的な青少年は48%、肯定的な教員が64%となっており、実際の受験者層への周知が課題となっている。また、A-level試験が将来の研究の準備として適切かという質問に対しては、教員の85%が肯定しているのに対して、大学側の肯定的回答は67%に留まっており、大学入学後の学修との接続の面で疑問が払拭されていない点も明らかとなった。 第二に、実務面での特徴として、2018年度の試験において受験者の不正行為で2715件が摘発されており、不正対応が課題となっている。また成績結果に対する異議申し立てによって、試験結果の1.17%が変更されており、異議申し立て制度とその検証、結果の公表までが全国試験としてのA-level試験に組み込まれていることが明らかとなった。 第三に、イングランドの中等教育機関のが入試改革に対する評価と対応について個別に調査し、2017年度に引き続き、2018年度のA-level試験に対しても、全体として好意的であることが明らかとなった。 第四に、日本国内の高等学校教育の質保証議論と高大接続改革の議論との関連で、イングランドの経験からの示唆を整理した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
投書の計画では3年目で調査自体は完了する見込みであり、特にイングランド資格・試験規則局の公開情報に基づいて、量的分析が実現できた点で大きな進捗が見られた。一方、実際の改革が進展する中で、(1)大学側の改革に対する評価が必ずしも高くないため、その背景を改めて確認しなければならないこと、(2)英国の準公的入試担当者組織であるSPAが政府からの財政支援を打ち切られるなど、追加調査を依頼すべき相手機関にも大きな変化が生じていること、(3)アンケート調査環境の変化で、ウェブサイトを活用した調査の準備に時間がかかっていること、が課題となっている。 これらの点を残り1年で明らかにして、研究成果全体をまとめることとしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
残された以下の課題について、訪問調査と量的調査を進める。(1)大学側の新入生受入れ策に変化がないか、学習支援センター対象の調査を実施する。(2)入試担当者組織であるSPAの閉鎖前に、関係者に対してインタビュー調査を実施し、入試専門職側から見た改革の背景や課題を把握する。(3)中等教育機関であるSFCの連合体にアンケート調査を実施し、GCEとGCSE試験の改革に対する評価と対応を確認する(2018年度後半から継続)。 秋までにこれらの調査を完了させ、その成果を8月の日英教育学会および11月の日本教育制度学会で報告し、年度末に最終報告書をまとめてウェブ上で公開することとしたい。
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Causes of Carryover |
複数行う予定であったアンケート調査の一つが2019年度春に実施となったこと、および郵送での調査票送付・回収を予定していたところ、アンケート調査実施環境の変化で、ウェブ調査に移行したため、人件費を含めて残額が生じたため。なお、最終年度に調査規模を拡大してアンケート調査を実施する予定である。
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