2019 Fiscal Year Annual Research Report
An important point of institutional ingenuity for the "articulation" issues in the public educational system ; Focusing on the case of the Netherlands
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16K04632
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
吉田 重和 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 准教授 (30549233)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | オランダの教育 / 教育制度 / 接続 / 重み付け対応 / 教育政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、オランダの公教育制度における「学校アドバイス」の有効性に着目し、その生成過程と活用方法の在り方を検討することにより、児童生徒の能力や適性を多面的に把握し、円滑な接続を実現するための制度的工夫の力点を明らかにすることを目的とした比較教育学的研究である。本研究は、「Ⅰ 学校種間の接続に関する現状と課題の把握」「Ⅱ オランダの小中接続に関連する制度的工夫の把握」「Ⅲ 小中接続に資する制度的工夫の在り方の提示」の三段階に区分される。以下では、それぞれ研究段階Ⅰ、研究段階Ⅱ、研究段階Ⅲとする。 研究段階Ⅰにおいて、日本・オランダ両国の事例を分析した結果、「学校種区分の変更:「複線型学校体系」への移行とその影響」と「評価内容・時期の変更:多様で長期的な評価の実施可能性」の二点が、接続課題に関する検討枠組として導き出された。 上記の検討枠組に即して研究段階Ⅱ及び研究段階Ⅲに取り組んだ結果、オランダの教育制度の成果と課題が素描された。具体的には、オランダの教育制度下では、学力面で相応の成果が得られている一方で、イスラーム学校の運営を中心に社会的な軋轢が生じていることが確認された。これらはいずれも、先行研究の結果を支持するものである。 他方で本研究により、オランダにおいて新たな制度的工夫が試行されていることが示された。その工夫とは「重み付け対応」政策である。これは「交付基準に該当する子どもが在籍している学校に対し、政府から追加の補助金を支給することにより、当該学校の学習環境整備を促進する」ことを骨子とするものであるが、社会的不平等を解消するために導入されてきた同政策については、効率性等の観点から批判・検討が加えられ、2019年度以降に変更する方向性が示されている。現時点での評価は困難であるが、学校種間の円滑な接続を補強する制度的工夫のベクトルとして、同政策は注目に値すると思われる。
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