2017 Fiscal Year Research-status Report
生徒指導領域における教師のゲートキーピング役割と多職種連携に関する研究
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16K04637
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
保田 直美 佛教大学, 教育学部, 准教授 (00751794)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生徒指導 / 教師役割 / ゲートキーピング / 多職種連携 / 学校における協働 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本の教師の仕事の特徴をゲートキーピングという観点からとらえ直すことである。近年学校ではSCやSSWなど教師以外の専門職の配置が進んでいる。これまで日本の教師は、教科指導のみならず、ありとあらゆる役割を自らの職務として引き受け、献身的に取り組んできた。そのような状況は他職種の配置により変化するのではないかと予想される。しかし、学校に非常勤で週1回程度配置される場合では、そのような教師文化は変化しない。教師は自らの役割を教科指導などに限定していくことはなく、むしろ「ゲートキーピング」の役割―他専門職にどのような職務を振り分けるかを決定する役割―を新たに担うようになっている。ただ、このような状況は今後常勤配置が進めば変化するかもしれない。そこで本研究では、常勤的な配置を行っている先進的なケースに注目して、教師文化の変化およびゲートキーピングの様相をとらえる。 2年目となる本年度は、規模は縮小したものの、計画通り、質問紙調査を実施することができた。当初の計画では、自治体内の多職種が常勤配置されている学校の教員とされていない学校の教員を比較する予定であったが、学校間で比較をすることは避けてほしいとの教育委員会の要望もあり、常勤配置されている学校の教員に対象を絞ることとした。また、働き方改革の影響もあり、質問紙調査の実施による負担自体をさける必要もあることから、対象者も各校5名程度にしぼり、また質問数も最低限にしぼった。調査はまず、9月に、平成28年度にフィールドワークを行った学校で教員全員(27名)を対象に行い、次に10月に、自治体内で多職種を常勤配置している学校50校強を対象に各校5名ずつ行った(最終的に298票回収)。実査は急遽10月に行うこととなったため、調査会社に外注することが間に合わなかった。研究代表が自身で進めたため、当初より必要な予算も大幅に減少した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度末の見込みでは、教員の多忙が問題となるなか、学校における質問紙調査の実施自体が厳しい状況であった。しかし、なんとか質問数や対象者数を絞ることにより、大変ありがたいことに教育委員会のご理解も得ることができ、実査に至ることができた。急遽実施可能となったため、調査会社への委託が間に合わなかったものの、なんとか対応することができ、計画通りすすめることができた。 本年度の量的調査の結果については論文にはしていないものの、データを単純集計などの形でまとめ、簡単な分析を行ったものを、当該教育委員会にはすでに報告している。平成30年度~平成31年度中にその内容をパンフレットや論文などとしてまとめていきたい。 なお、昨年度に修正した計画では、平成29年度中に平成28年度のフィールドワークをまとめた論文も作成する予定であったが、それは間に合わず、現在執筆中である。間に合わなかった理由は、教科書の一章を急遽執筆する必要が出たためであるが、その内容も多職種協働に関連するものであり、概念整理という点では本研究と直結している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定では平成30年度は分析と成果の発表に専念することとなっている。まず、現時点で執筆中の平成28年度フィールドワーク調査のまとめの論文(教員のゲートキーピングの様相について整理したもの)を7月末までに国内誌(『教育学研究』)に投稿する予定である。現在、調査対象校に原稿を確認してもらうなど作業を進めている。また、それと別に平成28年度フィールドワーク調査の結果について特に専門職間の役割分担に焦点を当てた研究と、量的調査のデータを分析した研究を進めていきたい。 また、既にある程度行っているが、協働に向けての実践的な考察を中心に報告資料をまとめ、ご協力いただいた教育委員会に提出する。調査に協力いただいた各校にも配れるように、結果をまとめたパンフレットも作成し、年度末までに配布する。 ここまでが当初計画に基づいて進める内容であるが、状況によっては、平成30年度も同じ自治体で同様の調査を行う可能性がある。また、昨年度予定してた予算よりかなり使用額が少なく済んだことから、今年度は別の自治体でも同様の量的調査を企画できないかとも考えている。時間的な制約が厳しいが、配置形態による違いを見るうえでも比較の観点は重要である。他府県でできる可能性がないか模索したい。
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Causes of Carryover |
今年度は調査対象自治体の教員(常勤配置校約11校とそれと同数の非配置校11校の全教員)に質問紙調査を行う予定であったが、いくつかの点で当該自治体の教育委員会から要望があり、かなり予算規模が縮小することとなった。 まず1点目は、常勤配置校と非配置校の比較をやめてほしいという点である。それゆえ、対象を常勤配置校のみに絞った。 つぎに2点目は、該当校の「全教員」を対象にしないでほしいという点である。教員への負担を減らす必要があり、全教員ではなく一部の教員(一校から5名ずつ)に絞ってほしいとの希望があった。そこで、全教員にさせていただけた一校をのぞき、一部の教員にのみお願いすることとなった。しかし、対象とする学校の数は増やしていただくことができた。そのため最終的には298票確保することができたが、当初予定の900票程度からは規模を大きく縮小することとなった。 最後に3点目は、教育委員会のご意向で調査実施決定から開始までがひっ迫したことである。実施決定後、すぐに実施することになったため、調査会社に委託する時間的な余裕がなかった。そこで、代表者で個人的に質問紙を作成し、入力等の作業もまかなったため、結果的に予算の使用額が非常に減ることとなった。とはいえ、個人的な持ち出しも多くあったため、できるだけ次年度は余裕を持って、計画に書いたとおり、当該自治体や他自治体での同様の調査を実行していきたい。
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Research Products
(1 results)