2018 Fiscal Year Research-status Report
家庭環境と地域社会の特性からみた移民の学業達成と地位達成:居住地間・国籍間の比較
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16K04639
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Research Institution | Osaka Seikei University |
Principal Investigator |
鍛治 致 大阪成蹊大学, マネジメント学部, 准教授 (50465655)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 国勢調査 / 調査票情報 / 進学率 / エスニシティ / 教育 / フィールドワーク / 移民 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)2010年国勢調査調査票データの分析からは次の知見が得られた。中国・フィリピン籍児童は母子世帯でも高校在学機会は小さくならない。中国籍児童は日本人継父がいると高校在学機会が1.90分の1になる。ブラジル・フィリピン籍児童は親の日本での職業で高校在学機会が左右されない。いずれの国籍においても、親の教育年数が1年長くなるだけで高校在学機会が約1.2倍になる。中国籍児童は人口の出入りが激しい地域の方が高校在学機会に恵まれる。フィリピン籍児童は高校在学率が高い地域の方が高校在学機会に恵まれる。ブラジル籍児童は第2次産業被雇用者の割合が高い地域の方が高校在学機会に恵まれる。ブラジル籍児童は同胞人口が少ない地域の方が高校在学機会に恵まれる。なお、以上の知見は日本教育社会学会第70回大会で発表することができた。 (2)エスニック・コミュニティー(大阪府の中国帰国者集住地域)でのフィールドワークにより収集された数量的データ(289人分)の分析からは次の知見が得られた。日本で生まれ育った2.0世の学業達成度(最終学歴等)は大阪府全体の数値とほぼ同等であり、下降同化(移民第二世代が社会の下層に組み込まれていく現象)は確認されなかった。一方、中国で生まれた1.2~1.8世では小学校後半から日本で生活している1.6世の学業達成度が最も高いが、これは1.6世においてバイリンガルやバイカルチュラリズムが実現しやすいからだと考えられる。なお、以上の知見は『移民・ディアスポラ研究』第8巻収録の拙稿にまとめることができた。 (3)その他:9月に千葉県の中国人集住地域と三重県のブラジル人集住地域を訪問し、地域社会の様子および公立小学校の日本語教室を見学させてもらった。また、夏休みと春休みは大阪府にある「日本語教室」(2カ所)に毎週通い、ボランティアとしてフィリピンルーツの児童と多く関わることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)2010年国勢調査の調査票情報を利用しつつ外国籍の児童の高校在学機会の決定要因について分析し、一定の成果をあげることができたため。 (2)エスニック・コミュニティーでのフィールドワークにより収集された数量的データを分析し、移民世代と学業達成の関係をあるいていど明らかにすることができたため。 (3)様々な外国人集住地域の学校や教室を訪問して地域社会の様子やそこで生活する子どもたちの様子を見学し、また、関係者に話をうかがうなどして、大阪府以外の地域や中国人以外の子どもたちについても理解を深めることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
補助事業の目的をより精緻に達成するため、2010年およびそれ以前に実施された国勢調査(1980、85、90、95、2000、05年)の調査表情報の利用を(再)申請し、以下の分析を行う。 (1)大阪府下の中国帰国者集住地域間の比較。 (2)それらの地域と大阪府内外における外国人集住地域との比較。 比較にあたっては、エスニックコミュニティのあり方やその形成過程が子どもたちの学業達成度にどうかかわっているのかについて考察する。 また、上記の分析と平行して、夏休みや春休みを利用し、外国人集住地域において学校見学を含むフィールドワークを実施する。
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Causes of Carryover |
補助事業の目的をより精緻に達成するために研究計画の一部見直しを行ったため。残額は主に旅費として支出する予定(夏休みや春休みを利用し、外国人集住地域において学校見学を含むフィールドワークを実施する)。
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