2016 Fiscal Year Research-status Report
イングリッシュ・バカロレア体制下における美術カリキュラム編成の集団的動向
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16K04660
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
直江 俊雄 筑波大学, 芸術系, 教授 (10272212)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 美術 / カリキュラム / イングリッシュ・バカロレア |
Outline of Annual Research Achievements |
1. イングランドにおける実地調査計画に関しては、チェスター、ケンブリッジへの訪問等を通して、主として英国美術デザイン教育学会が2015年から実施した過去五年間の政府教育方針の美術教育への影響に関する調査チーム研究者らと面談し、調査結果等に関する情報を得た。すべての学年段階において美術を学習する機会や授業時間が減少し、生徒の学習成果の質が低下しているという認識が示され、美術を学ぶ機会や環境に関する位置づけについて、学校間の格差が広がっている点などについて問題点を共有した。また、美術教師の勤務環境や勤務への意欲に対して重大な影響を及ぼしている可能性にも注目することができた。研究者間の連携は構築することができたが、イングランド中西部の中等学校訪問による調査と学校個別のカリキュラム収集の計画は、日程的に実施に至らなかったので、次年度の達成課題とする。 2. 美術カリキュラム編成動向調査方法の構築に関しては、1994年、2010年にイングランド中西部地域の中等学校で実施した調査をもとに試案を作成することについて、英国の研究協力者と意見交換を進めることができた。その際に、調査の継続性と発展性のバランスをどのように確保すべきか等の課題について認識を共有した。また、調査票の送付と回収体制について、具体的な検討を行い、オンラインによる調査実施の可能性を含め、準備を進めた。 3. 『芸術による教育』(H.リード、1943)に示された論点整理のための基本的な方向性について、英国の研究協力者と協議し、同意することができた。今後の議論の発展のためには、特定の地域に限定した考察よりも、現代の各国社会が共有する問題としてとらえていく必要性などについて意見交換を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日程の調整がつかず、イングランド中西部地域の中等学校における現地調査が現時点で実施できていない。短期の訪問で受け入れ学校側と日程調整することには困難が伴うが、研究者間の連携を通して実現の方策を探っていく計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
1. イングランド中西部地域の中等学校実地調査:美術カリキュラム編成動向調査の結果分析のための情報収集を主な目的とする。具体的には美術科年間指導計画の収集と分析、授業観察・教師聞き取り:質問紙調査で見出された観点の実地検証を行う。調査対象校の選定、協力依頼と訪問日程の調整について、平成28年度に協力を得られた研究者との連携を進め、実現に向けての方策を探る。 2. 美術カリキュラム編成動向調査の実施:質問紙調査の実施へ向けて、具体的な調査計画を策定する。調査対象としてはイングランド中西部の中等学校(約130校)美術科主任を想定し、1994年・2010年の調査と同様、バーミンガム市大学の美術科教育実習協力校全数を対象とすることで、対象の継続性を確保する。調査内容としては主としてキー・ステージ3(7~9学年)における美術科カリキュラムの編成と実施に関わる見解と実態とし、想定される調査項目として、ナショナル・カリキュラム、中等教育修了一般資格、批評学習、カリキュラム編成と実施、言語活動、イングリッシュ・バカロレアなどが考えられるが、とくにイングリッシュ・バカロレアの動向について新たな知見をもとに発展性を加えていく必要がある。 3. 芸術による教育の各論検討:平成28度の論点整理に基づき、一つまたはいくつかのテーマに関して日英両国の立場から資料を提供し合い、リードによる原著の解釈と評価、日英ならびに現代の世界における再解釈と適用の可能性、本研究で取り組む美術カリキュラム編成動向調査、教師のエンパワーメントとの関わりなどから議論を進める。
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Causes of Carryover |
計画では、英国現地調査を14日間で計算していたが日程調整がつかず実際には8日間の出張となったため、主に旅費に差額が生じた。また、計画では英文校閲費用を「謝金」欄に計上していたが、実際には校閲会社への支払いを「その他」欄に計上したため経費区分間の差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主として調査旅費にあて、当初の計画目標を達成する。
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Research Products
(4 results)