2016 Fiscal Year Research-status Report
子どもの描画における「9、10歳の節」に関する基礎的研究
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16K04678
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
栗田 真司 山梨大学, 総合研究部, 教授 (00195554)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 9、10歳の節 / 萩原浅五郎 |
Outline of Annual Research Achievements |
1960年代のはじめから障害児教育、特にろう教育の世界には、「9歳の壁」という発達の節を示す言葉があった。東京教育大学附属聾学校の萩原浅五郎が使い始めたようである。萩原は、知的障害がなくても、聴覚に障害がある場合には、助詞や副詞などの習得が困難になるため、文章表現を含めて言語表現能力が9、10 歳で停滞してしまうことを指摘した。これが「9歳の壁」である。ろう教育に限らず、教育現場では、9、10 歳の頃につまずきやすいということが指摘されてきた。「9歳の壁」や「10歳の壁」と言われている。「9歳の節」や「10 歳の節」と言うこともある。 10歳前後になると、友だちと自分の性格や能力などについて比較し、客観的に見つめるようになる。その結果、自信を失ったり劣等コンプレックスを抱いたりしやすくなる。また、この頃になると抽象的思考が重要視されるようになる。こうした思考の質的変化による根本的な考え方の変換がこの時期に起きると考えられる。 10歳頃になると、絵を描けなくなる子どもが出てくる。それまでは、知っているもの、経験したことを描くが、10歳頃になると、見ているものを見ているままに描きたくなる。しかし、見ているものを写実的に描く能力はない。すると、自分の稚拙な能力に自信をなくし、描かなくなる。これが子どもの描画における「9、10歳の節」である。最近では「13歳の壁」という言葉も耳にするようになった。 今年度は、こうした「9、10歳の節」の概要を文献調査によって整理した。同時に、学習意欲度調査を実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学習意欲度調査 6歳から14歳までの児童・生徒(小1~中3)を対象とする学習意欲度調査を実施している。想像画、観察画などの描画法や風景画、人物画、自由想画などの主題対象ごとに意欲度を尋ねている。 質的授業観察 描画活動を含む授業の観察を行い、描けなくなった子どもや意欲の低下している子どもが授業でどのような態度をとり、それに対して指導者がどのような対応や言葉掛けをしているのかを分析している。 9、10歳の節の概念の検討 9、10歳の節という概念の経緯を調査し、特に萩原浅五郎の「9歳の壁」について調査を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
意欲度質問紙調査と並行して、描画実験を実施する。 意欲度質問紙調査の標本に偏り(地域、学年)があるので、今後は調査対象者について調整する。
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Research Products
(1 results)