2016 Fiscal Year Research-status Report
「単元を貫く言語活動」を支える言語観と授業づくりに関する研究
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16K04710
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
渡辺 哲男 立教大学, 文学部, 准教授 (40440086)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山名 淳 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (80240050)
勢力 尚雅 日本大学, 理工学部, 教授 (80459859)
柴山 英樹 日本大学, 理工学部, 准教授 (60439007)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 中動態 / 詩人的な言葉 |
Outline of Annual Research Achievements |
「言語活動」を考察する際には、図画工作科の「造形遊び」のように、表現をしてみて初めて自分の考えていることが(暫定的に)分かったり、自分の表現を他者が解釈することにより、自分の表現しようとしていたことがよりクリアになったりする、という視点をもつべきである。従来の国語科教育の実践では、どうしても完結したメッセージを発することに拘ってしまっているところがあるので、他領域との交感が必要である。 今年度は倫理学、美学の研究者を講演会のゲストとしてお招きし、最新の研究成果を伺う機会を得た。2016年7月には古田徹也氏をお迎えし、表現する中でふたつの要素をレトリカルに結んで重ねていくことは、本質に接近したと捉えるべきか、問いを拡張していくと捉えるべきか、に関して、ヴィトゲンシュタインとゲーテを比較しながら論じていただいた。 また、同年12月には、伊藤亜紗氏をお迎えし、障害を抱える人々によるコミュニケーション、ヴァレリーの詩論の問題などが議論された。 これらの議論をもとにさらに研究メンバーで議論を重ねた結果、私たちは「中動態」概念に着眼するに至った。能動態でも受動態でもない、第3の態については、近年注目を集めているところであるが、この概念を「教育」という場で考察するとき、どのような知見が得られるか。次年度以降は、「中動態」概念について、集中的に議論を重ねていく予定である。 「言語活動」が教科横断的に重視されるに至ったのは、アクティブラーニングが一時盛んに論じられたことにも明らかなように、次期学習指導要領においても、「主体的、探究的な学び」が重視されているからである。とはいえ、「教育」の場に、ゼロからの主体性は存在し得ない。能動でも受動でも語れないレヴェルでの学習者の「言語活動」を考察することは、今日的状況においても、重要な課題であるように思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「中動態」への着眼という、研究開始時には想定していなかった新たな視点を得られ、その着眼が非常に有効であるという確証を得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
「教育の中動態」に関するさらなる理論的研究が必要である。また、「詩人的な言葉」による学習者の「言語活動」に関しても、洋の東西を問わずに理論的な研究を深めなければならない。「中動態」については、美学者や哲学者による著作が相次いで刊行されており、これらの研究に学んでいきたい。また、「詩人的な言葉」「言語活動」については、研究代表者が従来研究してきた西田哲学や京都学派の哲学者における詩論に注目していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
「中動態」への着眼という、当初想定していなかった研究成果を得て、今後「中動態」に関する知見を有する研究者を講演会などにお招きする必要が生じ、当初の予定以上に謝金や交通費などが、次年度以降必要になると判断されたため、次年度使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のように、「中動態」に関する知見を有する研究者をお招きしての講演会に伴って生ずる謝金や交通費、宿泊費として使用する予定である。
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