2016 Fiscal Year Research-status Report
音楽鑑賞を体験として取り入れた国語教育の視覚障害者への対応と支援システム構築
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16K04733
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Research Institution | Ishikawa National College of Technology |
Principal Investigator |
竹下 哲義 石川工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (90259846)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥田 浩司 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (90185538)
川除 佳和 石川工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (90552547)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 国語教育 / 視覚障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは、平成 17 年度より国語教育における体験として音楽鑑賞を取り入れる試みを実践している。この試みでの音楽体験はバックグラウンド・ミュージックと異なり、「ひらめき」や「発想」を促し、文学作品を新しい視点から捉える斬新な試みとして高く評価されている。本研究の目的は、健常者だけでなく視覚障害がある生徒・学生を支援する音楽体験を取り入れた国語教育システムを構築することにある。平成28年度は次に示す計画を実施に移した。 (1)視覚障害者にも使いやすいタブレット端末を利用した回答選択システムについて実験・考察を行う。 (2)視覚障害がある生徒(愛知県立名古屋盲学校の中等部3年生の生徒4人、比較のため石川工業高等専門学校の学生10名)へ音楽鑑賞を体験として取り入れた国語教育を実施した。教材は谷川俊太郎の「生きる」で、使用する音楽としてシューマンの「幻想曲」(演奏・内田光子)を用いた。 ここで、国語教育についての結果を述べる。視覚障害が有る無しによらず「初めの感想」では「生きるということ」の「奥深い」という印象を感じ取っていたが、音楽鑑賞の後に、「明るく前向きな印象」へと変化している。さらには「初めの感想」では「身近な例を挙げて述べている」という客観的な印象であったものが、「好きな部分の変化」を見れば「たくさんの美しい物が、すぐ近くにあるように感じた」と主観的な美しさを感じ取るようになっていることが分かった。これらの結果より、視覚障害が有る無しにかかわらず、音楽鑑賞が「感性・情緒」の育成に関与し、生徒・学生が詩をより深く感じ取ることを可能にしたと考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の計画をまとめると次の3点になる。 (1)盲学校の教諭や愛知教育大学視覚障害者教育領域の教員と協力して、視覚障害のある生徒へ音楽鑑賞を体験として取り入れた国語授業を幅広く実施し、教育効果を明らかにして報告する。 (2)タブレット端末を利用した音楽体験学習システムを視覚障害者に実際に体験してもらい、問題点を明らかにして改良を進める。 (3)幼児用玩具「デジタルスタンプキューブ」を用いた回答選択システムを改良していき、視覚障害者が種々の授業で使いやすいシステムを完成させる。 今年度は、(2)と(3)を主に行う予定であったが、(3)の予備実験の段階で「デジタルスタンプキューブ」を用いた回答選択システムを用いることに問題が発生した。そのため、(2)で用いるシステムの開発に時間を要するので、(2)を次年度以降にして(1)に取りかかることにした。こちらは予定より早く進んでおり、視覚障害が有る無しにかかわらず、音楽鑑賞が「感性・情緒」の育成に関与し、生徒・学生が詩をより深く感じ取ることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では次の3つの計画が設定されている。 (1)盲学校の教諭や愛知教育大学視覚障害者教育領域の教員と協力して、視覚障害のある生徒へ音楽鑑賞を体験として取り入れた国語授業を幅広く実施し、教育効果を明らかにして報告する。 (2)タブレット端末を利用した音楽体験学習システムを視覚障害者に実際に体験してもらい、問題点を明らかにして改良を進める。 (3)幼児用玩具「デジタルスタンプキューブ」を用いた回答選択システムを改良していき、視覚障害者が種々の授業で使いやすいシステムを完成させる。 計画(1)に関しては、既に予定より早く進んでおり、今後も愛知県立名古屋盲学校の全面的な協力のもと、多くのデータの収集を行って教育効果を明らかにして報告していく。(3)によるシステムの完成には予定より多くの時間を要することが判明している。しかし、既に解決の糸口はつかんでいるので、今後(2)の計画にも取りかかっていく。
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Causes of Carryover |
本研究で予定していた計画のひとつ、『幼児用玩具「デジタルスタンプキューブ」を用いた回答選択システムを改良していき、視覚障害者が種々の授業で使いやすいシステムの開発』の予備実験の段階で「デジタルスタンプキューブ」を用いる回答選択システムに問題が発生した。そのため、この計画に遅れが生じており、必要な経費が次年度以降の使用となる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究で予定していた計画で、理由の欄で述べたとおり「デジタルスタンプキューブ」を用いた回答選択システムの開発に問題が発生し、解決のために時間を要することが判明した。既に解決の糸口はつかんでいるので、必要な経費を次年度以降に使用していきたい。その後、開発したシステムを用いて『タブレット端末を利用した音楽体験学習システムを視覚障害者に実際に体験してもらう』という計画を実行していく。
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