2016 Fiscal Year Research-status Report
在日コリアンを対象とした外国人児童生徒教育の教員研修会にみる教師の専門性
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16K04741
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
磯田 三津子 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (10460685)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 在日コリアン / 外国人児童生徒教育 / 教員研修会 / 本名を呼び名乗る実践 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、在日コリアンを対象とした在日外国人児童生徒教育(以下、外国人教育と略す)における教師の専門性を教員研修会の内容を通して明らかにすることである。平成28年度は、本研究の1年目として、在日コリアンを対象とした外国人教育にする教員研修会への参加及び、研修会に関わる資料収集を行った。在日コリアンを対象とした外国人教育の教員研修会は、特に、西日本の小・中・高等学校の教員によって行われている。私は、その中でもZ市教育委員会が主催する「小学校外国人教育研究会」(以下、「外教研」と称す)に焦点を当て、1年間の主な活動に参加することを通して、「外教研」の目的や活動の内容について理解を深めた。「外教研」の活動内容に関しては、「外教研」の研究集会の際に配布している冊子に詳述されている。そこで、私は、「外教研」の1993年から2016年度までの研究集会の冊子を収集した。 収集した「外教研」の冊子を概観することを通して明らかになったことは、「外教研」が、「本名を呼び、名のることのできる学級・学校づくりをすすめよう」を重要なスローガンとして位置づけ、研究・実践が展開されてきたことである。本名を呼び名のるというスローガンは、1970年代に大阪で始まった在日コリアンを対象とした運動及び、教育実践の目標として位置づけられてきた。そして、その運動と教育実践は、全国に広がり、Z市もその影響を受けたと考えることができる。 そこで、平成28年度は、特に、本名を呼び名のる実践の中で形成された教師の力量とは何かについて教員研修会の内容を通して明らかにることを目的として研究を進めた。そのために、本年度は、まず、本名を呼び名のる実践の概念について教員研修会で報告された実践記録の内容を考察した。次に、本名を呼び名のる実践を分析するための視点として民族差別の考え方を理論的に整理した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は、本研究の1年目として、資料収集及び、教員研修会への参加を通して情報を収集することを中心とした。したがって、論文として成果をまとめるというよりも、収集した資料や情報を整理し、文献の内容を検討するという作業が多かった。そのため、論文投稿の段階まで成果を出すことができなかった。 平成28年度に多くの時間を費やしたのが、教員研修会の資料を分析・考察するための理論的な枠組みを構築することであった。理論的枠組みの構築に向けて、本研究に関連する文献を収集し、その内容を考察する必要があった。しかし、文献を読み進めてもなかなか本研究の目的に添った理論を見つけることができないことがあった。このことも研究の進展がやや遅れてしまった要因である。 一方で、平成28年度には成果もある。それは、Z市「外教研」の研修会等に年間を通して参加することができたことである。Z市の外国人教育に関わる教員への聞き取りや、研修会に関する資料を多く収集することができたことは、本研究において重要な意味がある。「外教研」について考察することは、本研究の目的を明らかにすることのできる可能性がある。こうした成果を平成29年度の研究につなげて行きたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、以下の3点について研究を進めていく。第一は、Z市の「本名を呼び、名のることのできる学級・学校づくりを進めよう」のスローガンに基づいた実践の中で必要とされた教師の力量とは何かについて明らかにすることである。このことを明らかにするために、Z市の本名を呼び名のる実践を収集し、それらを民族差別の排除に関する理論的枠組みに基づいて分析することである。 第二は、Z市「外教研」の教師が、なぜ、外国人教育に取り組むようになったのか、そして具体的にどのような実践を行ってきたのかについて明らかにすることである。以上の課題を明らかにすることを通して、外国人教育における教師の専門性とはなにかについて考察したい。以上の点を検討するために、平成29年度は、主に、「外教研」に所属する教員、元教員たちに聞き取り調査を行い、その内容を考察する。以上に挙げた第一と第二の課題については、論文としてまとめ、学会発表及び、大学の紀要等に投稿する。 第三は、全国在日外国人教育研究協議会、奈良県外国人教育研究会、兵庫県在日外国人教育研究協議会、大阪府在日外国人教育研究協議会の研修会への参加と、研修会に関わる資料の収集を継続して行うことである。そして、平成29年度は、それらの資料をどのようにまとめていくことができるのか、そして収集した資料を分析するためにどういった理論を用いるかについて、先行研究等を踏まえて考察する。
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