2016 Fiscal Year Research-status Report
日中韓における書教育に関わる教員養成モデルの構築-現状の比較・分析を通して-
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16K04746
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
加藤 泰弘 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (00292996)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 日中韓の書教育 / 教員養成 / 教科書教材 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は日本・中国・韓国における書教育の関係法令、教育課程等の比較分析と学校現場の実態の把を通して、書教育に関わる教員養成について検討を行おうとするものである。 本年度は特に中国の書教育における関係法令、教育課程について、連携研究者の草津祐介氏と整理・分析を推進した。また、8月には同氏と訪中し、北京師範大学、首都師範大学、北京語言大学、華中師範大学の担当教員とインタビュー形式の情報交換を行い、中国における小学校書法教育の実態と教員養成の現況について情報を得ることができた。各大学ごとに抱える教員養成についての課題の多様性が明確になったところである。また、北京書法学校を訪問し、中国書法家協会(中国における書法家の全国組織)が学校教育における書法教育の実施と展開について、側面からどのように関わっているのかについての取材を行った。 華中師範大学の訪問では、中国教育部の基礎教育課程専門家委員会の委員である雷実教授との懇談が実現し、小学校の書法教育に関わる関係法令の整備の背景や教科書教材の検定等について具体的に把握することができた意義は大きい。平成29年度に予定されている国際学術シンポジウムへの招聘についても承諾が得られ、本年度の研究の推進の道筋を立てることができた。 中国においては、近年の関係法令の基づいて、小学校第3学年から「書法」の授業が導入されることを踏まえ、近年、書法教育の教科書が数種が発刊された。これらのほとんどを入手できたので、平成29年度に具体的に分析を行う予定である。 韓国については、関係法令の整理と各教員養成大学における実態を連携研究者に依頼して整理を行い、一部は翻訳に着手したところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中国における書法教育の関連法令等の翻訳、大学における教育課程の状況の把握等については、当初の予定通り、連携研究者とともに推進し、概ね完了に近づいている。 8月の訪中において、首都師範大学、北京師範大学、華中師範大学、北京語言大学を訪問した。関係教員から、小学校書法教育の実態について取材を行うとともに意見交換を行い、書法教育を担当する教員養成の状況が明確になったことは、当初の計画以上の成果であると考えられる。北京等の大都市では、小学校から書法教育を導入する関係法令の施行を受けて、第3学年から本格実施となったが、教員の不足が指摘されている。書法の授業を国語科や美術の教員が展開しているという実態も浮き彫りになっている。都市部では、この問題に対応するため書法教員の養成を積極的に推進していこうとしている。 また、中国では、日本の教育職員免許状と異なり、課程認定という制度がなく近年、広く開かれている実態が明らかになった。教師資格証の取得の視点から教員養成について検討していくという新たな研究の課題と方向性が明確になったところである。 近年、中国教育部の検定を受け、11種発刊された、小学校書法教育関連の教科用図書も概ね収集でき、分析に着手したところであり、当初の計画通りの研究が進行している。 韓国については、連携研究者による関係法令の翻訳や教育系大学の整理は、現在まだ進行中であり、完結できていない点については若干の課題が残ったので、本年度に早急に推進していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、中国で収集した教科書教材の分析を行うとともに、8月には訪中して、28年度に訪問できなかった師範系大学の調査と関係研究書の資料収集を連携研究者と行っていく。また、都市部ではない地方における、書法教育の実態や師範系大学の教員養成の実態調査も推進していきたい。 韓国については、引き続き関係法令の翻訳と大学の教員養成の実態について、連携研究者に依頼して資料収集、整理を推進していく。 12月には、学術討論会(国際学術シンポジウム)を日中友好会館で開催し、日中韓の教員養成システムについての意見交換を行う。一般にも広く公開し、研究者からの意見を広く求めていきたい。中国からは、中国書法教育に関わる法令作成を担当した華中師範大学教授の雷実氏、山西大学美術学院の王力軍氏、韓国からもしかるべき研究者を招聘する。内容は①中国における「中小学書法教育指導綱要」の制定の背景と意義について②中国における小学校書法教育の実態と課題③日中韓における書法に関わる教員養成の実態と課題等についての協議等を予定している。 平成29年3月に小・中学校の学習指導要領が改訂され、国語科書写についても、小学校低学年における水書用筆による指導の導入などが示されたので、これらについての日中韓で意見交換を進めていきたい。これらの成果を「中間報告」としてまとめて広く公開していく予定である。
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Causes of Carryover |
中国の小学校書法教育に関わる教科書教材について、当初は現地での購入を予定していたが、現地の大学の研究者等から寄贈され、経費を拠出する必要がなくなったため。また、研究推進のためのPC等の物品が、予定額を下回ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、日中友好会館のホールで100人規模の国際学術シンポジウム(国際会議)を当経費で開催する。その会場の借り上げ費用、中国及び韓国の研究者招聘の経費、通訳謝金等が当初計画より多額となることが予想される。本シンポジウムは、広く一般公開し、研究冊子等も発行する予定である。 これらのシンポジウム運営経費を中心に、8月の訪中による実地調査や資料収集などを含め、本年度の配分される研究費と併せて執行していく計画である。
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