2017 Fiscal Year Research-status Report
伝統的な言語文化に関する教材の基礎的研究―笑いの視点から―
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16K04765
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
蔦尾 和宏 専修大学, 文学部, 教授 (50510765)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 徒然草 / 国語教育 / 説話 / 教科書教材 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は徒然草と枕草子の「笑い」の質の差異に着目し、両書の作者の社会的立場(清少納言は宮仕えの身であり、主が存在。作品自体が主との関わりの中で成立。対して、兼好は遁世の身であり、使えるべき主を持たず、主との関わり中で作品が成立したわけではない)にその差異が由来するとの作業仮設に基づき、作品の本文分析を行う予定であったが、来年度に予定している霊験譚の分析、すなわち、神仏からもたらされたご利益に不満を抱き、これをそのままに受け取らず、より多くの利益を求める「神仏にたてつく人々」の系譜を考察する課題が、その性格上、多くの文献に当たる必要が想定されるため、こちらを先行して取り上げることとした。本研究が出発点とした『宇治拾遺物語』を遡る和文献を通読・検討した結果、本課題の解明には、和文献に留まらず、仏典や漢籍にまで視野を広げるべき(或いは世界各文化の神と信者の関係にまつわる宗教伝承をも含めて)であることがわかってきた。そのため、早急に結論を出すことは慎み、さらに時間と労力を費やして、調査対象の文献を広げることとしたため、来年度も継続して、考察を続けていくが、何にせよ、当該課題の研究機関が終了した段階で、中間報告をまとめられるように努めたい。 なお、用例収集未完とした昨年度の課題については、和語の用例を基礎にした研究テーマは凡そ基礎データの収集を終えたと考えられる。ただし、断片的な知識の集積にとどまるため、体系的な立論を伴う論文化には未だ至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
この二年間、基礎的なデータ収集に労力を傾注してきた。そのため、一定の基礎データは確保できたものの、調査の進展に伴い、データの収集対象が和文献にとどまらず、漢籍・仏典にまで広げなければ、最終的な結論を得るのが難しいことが明らかになってきたため、データに基づく立論作業を本格的に進められずにいる。 そのため、来年度は「笑い」を視座とした徒然草と枕草子の立ち位置の違いを明らかにするテーマを重点的に進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の目的・方向性に問題はないと思われるため、研究内容を変更することは考えていない。来年度は研究期間の最終年度に入るが、この二年間で基礎的なデータ収集はそれなりに進められたことから、前項に挙げた活字化しやすいテーマを優先的に取り上げていく。ただし、研究期間内に成果を出すために、拙速に活字化することは避けたいと考える。
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Causes of Carryover |
本年度は年度の交付決定とほぼ同額の研究費を支出したが、前年度の繰越金を完全に支出するに至らなかったため、残金が生じた。 翌年度は最終年度に当たるが、全体として研究状況に少なからぬ遅れが生じているため、書籍を中心とした物品費、研究のヒントを得るための学会参加に伴う旅費など、今年度以上の研究費が必要となると考えられる。
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