2016 Fiscal Year Research-status Report

身近な空の観察をもとにした気象学習教材の開発

Research Project

Project/Area Number	16K04768
Research Institution	Hiroshima University
Principal Investigator	吉冨健一広島大学, 教育学研究科, 准教授 (00437576)
Project Period (FY)	2016-04-01 – 2019-03-31
Keywords	気象 / 雲 / 教材開発
Outline of Annual Research Achievements	中学校の第二学年において生徒が気象分野の学習を行うための，身近な空の観察をもとにした気象学習教材の開発を行った。天気の変化や雲の発生は，所在地の緯度・経度や標高による地域差が大きいにもかかわらず，教科書の典型的な例示に頼らざるをえないことに気象学習の問題点がある。また，授業時間による限られた時間内の観測からでは有効な法則性を見つけることは大変難しい。そのため本研究では，Webカメラを用いて，空模様の変化を常時観察するとともに，アメダス等で公開されている気象データを活用して，Web上に天気の変化とその要因を表示するシステムを構築し，学習者が天気の変化を観察しやすくすることで，気象の変化を把握し学習するための学習教材の開発を行う。初年度は，Webカメラを用い，日の出から日の入りまでの天気の変化や雲の発生を毎日自動で記録する“記録システム”，および記録された写真や動画をデータベースとして記録・整理・公開を行う“公開システム”の開発を行った。どんな気象条件の時に，どんな雲が発生するかは，経験を積むことである程度は予測できるようになるものの，想像しなかった雲が出現することもあり，結局はいつどんな雲が現れてもよいよう日々，空模様を記録し続けていくことが教材開発の第一歩である。しかも，雲の変化はとてもゆっくりしており，かつ形が少しずつ変化するため，変化を記録するためにはインターバル撮影を行うことが望ましいが，頻繁に撮影を行いすぎると容量が増大し，後で整理する際にも大変になる。また，撮影間隔が開きすぎると雲の変化の様子が不明瞭となる欠点が挙げられる。そのため “記録システム”としては，日の出から日の入りまでの東広島市の空模様を北側と南側に向けたカメラで毎日欠かさず記録し続け，さらに記録された画像や動画等の情報について，１日の変化とダイジェストとして表示する“公開システム”の作成を行った。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason 従来の気象学習の問題点は，所在地の緯度・経度や標高による地域差が大きいにもかかわらず，教科書の典型的な例示に頼らざるをえないことにあった。天気の変化は様々な地理的要因に左右され，その土地特有の変化の様式を持っていることが多い。また気象の学習には，学習指導要領において自ら観測を行い，気温や湿度などの変化が，天気の変化と密接に結びついていることを学ぶ必要性が問われているが，実際問題として，気象の単元にあてられる時間数の問題や，週１回程度の限られた時間，および教室や校舎周辺など限られた場所での観測からは，天気の変化に関して有効な法則性を見つけることは難しい。例えば，温暖前線や寒冷前線の通過に伴う雲の種類や気温の変化を学習しようと思っても，低気圧から伸びる前線が観測地をきれいに通過するのは年に数回のチャンスしかなく，それが授業時間にあたる可能性はほとんどゼロに等しい。気象の学習における重要なポイントは，気象の学習に適した年に数回のチャンスを記録し，教材として活用することである。そのため本研究では，発生する雲の種類や動く方向など変化の様子を微速度撮影の手法を用いて動画として記録し，衛星画像や天気図を併用して天気の変化と対比させて学習するための学習教材の開発を行っている。初年度にあたる平成28年度には，開発した雲の記録システムの安定運用を目指すとともに，記録した画像を用いた授業実践を予定通り行い，ほぼ計画通りに研究は進んでいるものと考えている。
Strategy for Future Research Activity	研究の二年目にあたる平成29年度は，大学の講義における教材として，実際に雲の観察を行ったり，記録した雲の画像や動画データ等を，学生がタブレット端末等を用いてインタラクティブに利活用したりできるよう改良を行っていく。また，雲の変化の様子と，天気図と風向きの情報や，気象衛星からみた雲の画像等を併せて利用できるようシステムの改良を行っていく。
Causes of Carryover	残額が1万円未満と少額であったため，無理に執行せず翌年度に利用することとしたため。
Expenditure Plan for Carryover Budget	文具・書籍等の購入費として使用する予定