2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K04770
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
樫葉 みつ子 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (20582232)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳瀬 陽介 広島大学, 教育学研究科, 教授 (70239820)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 当事者研究 / 教師教育 / コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
「当事者研究」は、北海道浦和の「べてるの家」での長年の実践から編み出されてきた自己探求の方法である。困難な状況にいる人間が「当事者」として周りの共感的理解を支えにしながら自己理解を深め、問題状況の可視化を図り、問題解決への端緒を見出そうとする「当事者研究」は学術的にも発展し、社会学者や哲学者による方法論の理論的基盤も整理されている。本研究の目的は、英語科教員志望学生が、思考・判断・表現力を身につけ、さまざまな葛藤に苦しみながらも、学校づくりに参画できるように「当事者研究」を行えるようにするため、その支援のあり方や、実践の特徴などを、アクションリサーチによって明らかにすることである。 初年度は、まず、「当事者研究」の実態や原理を理解するために、研究の拠点である北海道浦和の「べてるの家」に現地取材を行った。さらに、当事者研究の交流会に参加したり出版物を調査したりするなどして、多様な当事者研究の事例に触れた。以上の取材で得た情報に基づいて、「当事者研究」の特徴や成立要件の整理を試みたところ、それらは「当事者の初心」「仲間の流儀」「研究の発想法」「研究の実践法」の4つの範疇に分類された。次に、研究者がこのような原理を十分に説明した上で、卒業前の英語科教員志望学生47名が「当事者研究」に取り組んだ。 二年次は、第一次「当事者研究」で得られたデータについて、研究者同士で解釈・分析を行った。その結果、英語科教員を目指す学生にとって、本実践が「コミュニケーションの学び直し」という特徴をもつものであることが明らかになった。このような第一次「当事者研究」の実践と成果については、学会発表を行い、論文化した。論文は、研究紀要に査読論文として掲載された。また、「可視化」の点でさらに支援のあり方を工夫した上で、別の研究協力者を得て、第二次「当事者研究」を実践した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.コミュニケーションという観点から、英語科教員志望学生にとって「当事者研究」の持つ意義を明らかにすることができた。 2.第一次「当事者研究」で効果のあった支援方法をさらに改善し、別の研究協力者を得て、英語科教員志望学生による第二次当事者研究の実践を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.第二次「当事者研究」の実践から得られたデータをもとに、第一次とは異なった観点から分析を行う。 2.1の結果をもとに学会発表を行い、論文化する。 3.第三次「当事者研究」の実践を行う。
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Causes of Carryover |
(理由) 「当事者研究」を行う団体の交流会に参加する機会を得られなかったこと、また、第二次「当事者研究」への参加者が第一次より少なかったため、データの整理に要する経費が予定額を下回ったことなどの理由による。 (使用計画) 旅費は、「当事者研究全国交流集会(名古屋大会)」への参加に充てる。また、その他の経費は、第三次「当事者研究」のデータ整理に用いる。
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