2016 Fiscal Year Research-status Report
学校部活動におけるリスクマネジメントと適切な指導者育成に向けた研究
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16K04777
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Research Institution | Nippon Sport Science University |
Principal Investigator |
南部 さおり 日本体育大学, スポーツ文化学部, 准教授 (10404998)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 部活動安全 / スポーツ指導 / 体罰防止 / スポーツ危機管理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
広く体育教員及び部活動指導者を排出する日本体育大学において、主に教員志望学生を対象にして「学校・部活動における重大事件・事故から学ぶ研修会」を全3回開催した。同研修会は、体育大学においては初の画期的試みである、「学校・部活動事故の被害者による学生への直接授業」形式で行った。全3回の研修会には各300人を超える参加者があり、さらに学校部活動指導者育成における画期的試みとして、多くのメディアが取り上げ、広く注目を集めた。研修会に参加した生徒たちの満足度は極めて高く、将来教員になった際に、子どもの命を第一に考えるとの決意を、大多数の生徒達が表明していた。 また、部活動における熱中症死亡事故被害者4遺族で結成された任意団体「エンジェルズアーチ」と共同し、「子どもやアスリートの重篤事故を防止するために!」とする研修会・研究事業を開始し、今後も大学の垣根を超え、広く学生・指導者・一般への啓発活動を行うための準備が十分に整っている。同活動の一環として、今後熱中症研究者との共同研究も予定している。 日本体育大学では、部活動の安全指導や体罰の防止に関する授業を担当し、広く学生への啓発を行うとともに、大阪体育大学において「運動部指導実践論」の1コマを担当し、さらに、駿河台大学で運動部活動を行う学生に向けた講演を行うなど、学校部活動におけるリスクマネジメントにつき、体育に従事する学生に向け広く情報発信を行った。 長野県教育委員会は、中高部活動指導者に向け、部活動事故と事後対応に関する講演を、日本体育協会スポーツプログラマ養成講座では「スポーツと法」と題して、従来の部活動事故をベースにした危機管理の重要性に関する講義を行った。 このように、学校部活動におけるリスクマネジメントと適切な指導者育成に向けた事業を充実させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本務校が横浜市立大学から日本体育大学に移ったことで、将来の学校部活動の指導を担う学生たちに近い位置において、様々な方法での教育活動を行うことができるようになった。本研究の遂行のために、予想外の好環境が得られたものと思われる。 また、日本体育大学が大学を上げて本研究を支援してくれたため、大規模な研修会事業を連続開催し、教員志望の学生を大勢動員することができた。さらに、同研修会事業が学内外でも広く支持され、他大学や他県教育委員会での講演依頼を多数受け、今年度の研究成果としての部活動におけるリスクマネジメントと適切な指導方法に関する啓発活動を積極的に行うことができた。 そして、このような恰好の研究環境の下、日本体育大学紀要に「愛知県立刈谷工業高校野球部体罰自死事件の死亡見舞金支給に関する日本スポーツ振興センターの決定」(第46巻1号、59-65頁)、「平成28年9月7日スポーツ振興センター法施行令改正―高校生の自殺にかかる災害給付金支給基準と注意点―」(第46巻2号、185-188頁)の各論文を掲載し、不適切な指導によって招かれた生徒の自殺という事態に対し、政府や社会が積極的に遺族への救済を行うとともに、「死を招く不適切な指導」の絶対的防止の姿勢が打ち出されたことの速報を広くスポーツ指導者や学生に伝えることができた。 さらに、これらの積極的な啓発活動によって、多分野の専門家や事故当事者、弁護士等の様々な立場の方々との研究連携体制を持つことができ、次年度以降の研究活動につなぐことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、早稲田大学の熱中症研究者との連携の下、スポーツ環境における熱中症のリスクに関する調査研究を行い、同時並行して、積極的な啓発活動を行うことが予定されている。また、適切な部活動指導者育成のために、初年度実施した日本体育大学「学校・部活動における重大事件・事故から学ぶ研修会」の実施を継続し、「事故当事者の生の声」を、教員志望学生のみならず、現役の教職員や一般に広く伝えてゆくことを予定している。さらに、現時点で教育委員会や各種学会、スポーツ団体などから講演依頼が多く来ていることから、高い水準の教育活動を行うために、広く情報収集と研究活動を行っていきたいと考えている。 次年度は研究の最終年度であるため、事業の目的である学生指導のためのガイドラインの作成に向けた資料収集と事実調査、事例分析活動などを積極的に行ってゆく。できるだけガイドラインを出版ベースに載せるため、より洗練された研究となるよう心がけたい。
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[Presentation] スポーツと法2016
Author(s)
南部さおり
Organizer
日本体育協会スポーツプログラマー養成講座
Place of Presentation
日本体育大学(東京都世田谷区)
Year and Date
2016-08-28 – 2016-08-28
Invited
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