2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K04781
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
広石 英記 東京電機大学, 工学部, 教授 (80246652)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 学習としての評価 / メタ認知 / ルーブリック / コンピテンシー / 自律的学習者 |
Outline of Annual Research Achievements |
28年度は、能動的な学習体験を統合化できる総合学習のカリキュラムデザインの基軸としてのプロジェクト学習の活動の流れを確認すると共に、その能動的で自律的な学習活動のツールとしての「プロジェクトルーブリック」の機能と個別の目標設定機能を持った、生成型ルーブリックの調査・研究を行った。 29年度は、その成果を下に、更に米国のPBLを基軸としたチャータースクールの現地調査(米国で著名なミネソタニューカントリースクールやエドビジョン系列学校)を行い、自律的学習者(Self-directed Learner)に必須のメタ認知力(Meta-cognition)の育成の具体的手法や電子化されたルーブリックの構成や機能について調査・研究した。 先進的なPBL実施校では、プロジェクト活動の中核に「学習としての評価」が構造的に組みこまれおり、プロジェクト活動を学習者自身がメタ認知することは、学習評価への参画を促し、学習方略の選択性を高め、困難を克服する姿勢(レジリエンス)、学習への前向きな姿勢(Growth Mindset)を高めると同時に、学習者の自己評価力や自己調整力を育成できることが確認できた。 また、学習としての評価活動は、単発的なものではなく、PBLの全体的なカリキュラムデザインにおいて、①学習の意義の自覚②プロジェクト課題の自己設定③ルーブリックのモデレーションによる生成④ルーブリックを反映したポートフォリオによる自己調整学習⑤学習成果の自己評価など多様で多層的な自己評価の機会を設けるカリキュラムデザインが重要であることが確認された。プロジェクト学習に期待されるコンピテンシーの内実として、メタ認知力の育成を明らかにし、それを育む手法を学会発表や論文によって公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
能動的な学習体験を統合化できるPBL型の総合学習を構想することは、自律的な学習者(学び続ける者)の育成を目標としている。そのような自律的学習者には、現実的な課題にかかわるための実践力として様々なコンピテンシーが要請される。そのなかでも重要な生きる力としてのコンピテンシーの一つが自分の活動を冷静にモニタリングし、自己調整できるメタ認知力(省察力)である。 そして、海外の先進的なPBL実践校においては、教科のコンテンツの個別学習もさることながら、21世紀型能力の中核として、このメタ認知力を育むPBLのカリキュラムデザインが、精緻に設計されていることが、現地視察やインタビューの実施によって明らかとなった。 このメタ認知力(省察力)とその転移(メタ認知的活動を他の学習領域においても自律的に展開できること)こそが、総合的な学習で育むべき実践的な力(コンピテンシー)の重要な内実の一である事が、明確となり、その力を育む具体的な手法(学習としての自己評価の機会設定のあり方や手法)の解明が進んだ事は、大きな研究の前進であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
様々な学校教育における能動的な学習体験を「まとまった自律的な学習活動が可能な」PBL型の総合学習を通じて、その意味や意義を「統合化」できるプロジェクト型の総合学習のカリキュラムデザイン(全体的構想)や、その活動の中でも重要な「学習としての評価」に関する研究は、一定の成果が見られた。 今年度は、このようなPBL型総合学習で得られた「レジリエンス」「学びへの姿勢」「メタ認知力」などのコンピテンシーを、他の教科学習などに転移させる可能性とその具体的手法を研究したい。そのために海外(特にヨーロッパ)のコンピテンシー育成に重点を置いた学校教育の実態を現地調査すると共に、その知見を生かして、総合学習を核として学校教育全体を生徒のコンピテンシー育成を主眼としたものへと変革する第一歩としてのカリキュラムマネジメントの可能性を研究する。
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Causes of Carryover |
国内のPBLを主軸とした学校(きのくに子どもの村学園、グリーンヒルズ小中学校)への現地調査が、本務都合で実施できなかった。本年度は、学校のカリキュラム全体をプロジェクト学習を中心として学校改革に取り組んでいるスウェーデンやフィンランドの学校視察と国内の上記学校の視察を入念に行い、研究成果を仕上げた上で、学会発表や論文、さらには著作を通して公表したい。
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Research Products
(4 results)