2020 Fiscal Year Research-status Report
幼児教育保育における食育の実践的指導力を評価する指標の構築
Project/Area Number |
16K04786
|
Research Institution | Soai University |
Principal Investigator |
進藤 容子 相愛大学, 人間発達学部, 教授 (00259532)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 幼児教育 / 保育 / 食育実践 / 指導力 / 評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず,現場保育者,研究者対象の調査と分析から食育実践に必要な指導力を検討した。初めに,保育者対象調査の質問紙を検討した。質問紙は,①「内容・方法の重視度」,②「ねらいの重視度」,③「食意識・食行動」,④「知識・技術」からなる。本質問紙を用い,保育者763名を対象として調査を実施した。次に,食育研究者を対象とした半構造化面接調査を実施した。これらの調査結果から,食育実践の重要事項,保育者の食育実践や関連する意識・態度の実態を把握できた。さらに分析を加え,食育実践と保育者の知識や意識,態度の関連を考察した。その結果,食育実践内容が食育のねらいと関連が深いことが示された他,今,注目されている「食環境全体に関わる体験」などを重視している保育者は,食に関する「やや専門的な知識」を習得している傾向が高いことが示唆された。「やや専門的な知識」の習得は,望ましい食意識・食行動とも関連が見られ,季節への感性とも関連があった。また,保育者の食育実践力成長過程についても分析,考察した。日常の保育に不可欠な一部の事項については経験年数が影響したが,全般的に,食育実践に関連する事項に,保育経験はあまり影響しないことが示唆された。食に関する知識のうち専門性がある程度高い事柄も,日々の生活や保育経験だけでは身に付きにくいことが示された。一方,食に関する知識や関心,主体的な食への関りは年代とともに高くなる傾向にあった。これらの結果から,養成教育や研修の在り方に課題があることも確認できた。 以上の成果を踏まえ,食育実践力評価の視点と評価ツール構築の方針を整理した。当初は,ルーブリックが有用と想定していたが,より効果的なツールとして,ルーブリックを有効に活用するとともに,知識提供,意識や態度のチェック表などを組み合わせたものをデザインした。今後,この方針に従い評価ツールを構築する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究初年度である平成28年度は,調査協力者への連絡調整,倫理審査等の環境整備および調査内容の検討に時間を費やしたため,申請時,平成28年度に予定していた各調査の実施が平成29年度実施となった。平成29年度は,年度当初に予定していた調査を実施したが,質問紙をより完成度の高いものとする作業に時間をかけたため,調査および分析が一部残った。平成30年度は,それらの調査および分析を実施し,計画当初平成29年度に実施を予定していた内容はほぼ完了した状況ではあったが,評価の観点を吟味するにあたり,分析をさらに精査する必要が生じた。そのため,令和元年度は,再度精密に分析を行った。予定していた評価指標の試作と評価の試験的実施については,令和元年度中に取りかかることができず,1年間研究期間延長を申請した。令和2年度には,分析内容を精査しながら評価指標を定め,評価ツールを提案する予定であった。しかしながら,新型コロナウイルス感染症対応で他業務多忙となったため,予定通り研究を進めることができず,さらに1年間研究期間延長を申請した。これらの状況から,進捗状況は「遅れている」である。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究進捗状況は,「遅れている」であるが,研究自体は交付申請時の計画にしたがって進行しているため,計画内容は変更することなく遂行する。すでに,必要な調査と分析は完了し,その成果を踏まえ,評価指標の視点と構築方針は定められている。 令和3年度は,この構築方針にしたがい,具体的な食育実践力の評価ツールを作成する。また,入力,集計の効率化のため評価ツールを電子化する。試作した評価ツールの有効性を確かめるため,現場保育者および保育者養成校学生を対象に評価の試験的実施を行う。調査は,幼稚園,保育所,認定こども園の保育者と,保育者養成系の4年制大学(申請者本務校を含む)および短期大学の学生を対象とする。本務校では,学習経過との関連を見出す目的で,全学年の学生を対象とする。実施方法は,直接依頼し承認を得た園・校の実情に合わせ,紙もしくは電子媒体での評価ツールを送付して回答を依頼する。回収は返送もしくは直接受取りにて行う。調査の趣旨説明は,園・校の教職員に依頼する。 評価の試験的実施結果から,規準,項目の妥当性を検討する。研究成果をまとめ,食育の実践的指導力評価指標を提案する。
|
Causes of Carryover |
(理由)主として,令和2年度中に実施予定であった,食育実践力評価ツールの作成,電子化が作業途中であること,及び,試験的活用調査が未実施となったためである。 (使用計画)令和2年度に実施を計画していた食育実践力評価ツールの電子化,試験的実施に係る印刷物や消耗品,調査協力者との連絡,研究成果発表に使用する。用紙,印刷消耗品等物品費(\15,000)。関連文献,図書費(\10,000)。調査協力者との通信・郵送費(\10,000)。研究発表にかかわる参加費(\20,000)。成果発表印刷費(\16,000)。
|