2016 Fiscal Year Research-status Report
読字障害における中間表現型:認知・知覚機能のサブグループ化と介入支援方法の開発
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16K04802
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
柳生 一自 北海道大学, 医学研究科, 特任助教 (90597791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 竜作 北海道医療大学, リハビリテーション科学部, 准教授 (00411372)
関 あゆみ 北海道大学, 教育学研究院, 准教授 (10304221)
齊藤 卓弥 北海道大学, 医学研究科, 特任教授 (20246961)
須山 聡 北海道大学, 医学研究科, 特任助教 (70758581)
白石 秀明 北海道大学, 大学病院, 講師 (80374411)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 限局性学習症 / ディスレクシア / 読字障害 / 脳磁図 |
Outline of Annual Research Achievements |
H28年度は北海道大学病院小児科・精神科外来にて約20名の限局性学習症と診断される児童をリクルートしてきた。全例について臨床表現系としての各種検査(WISC-IV、音読検査など)を行ってきた。また認知・知覚的表現系については音韻処理課題の準備を行い、眼球運動機能検査についてもGazefinderを用いた課題を作成した。またDTVP-3を海外から購入し、今後は標準データの取得を含めて検討していく予定である。またタブレット機器とタッチペンを用いた書字評価ソフトウェアの開発を進めており、微細運動困難を原因とする書字障害児の評価方法を確立する予定である。 脳神経基盤研究については20名以上のディスレクシア群および14名の対照群で音読時の脳活動について脳磁図を用いて測定した。現在これによって得られた結果からは、無意味単語音読時の左側頭葉上側頭部の活動低下、有意味単語音読時の左下前頭葉の活動低下、さらに絵の呼称時に右下前頭葉の活動亢進が明らかとなった。特に絵の呼称時の脳活動の違いは、読字障害をもつ子どもたちが、文字だけでなく視覚刺激に対する反応が異なることを示しており、視覚刺激にて通常と異なる脳内経路を使用していることが示唆された。一部の研究では読字障害をもつ人は、視覚的・空間的な把握能力に優れているという報告もなされており、本研究で得られた結果は、こうした脳活動のそもそもの違いを示しているのかもしれない。今後はさらに音韻認知、意味認知に特化した課題により、より本質的な脳神経機能について研究を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H28年度までに北大病院小児科・精神科外来にて約20名の限局性が句集症と診断される児童をリクルートしてきたが、人数は十分ではなく今後の研究推進策にて解決していきたい。また認知表現系の評価が遅れていた。これは課題の導入、開発や眼球運動測定装置の導入が遅れたためである。これらは今年度第4四半期にほぼ導入が進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の段階ではサブグループ化を十分に行える人数をリクルートできていなかったため、今後は研究分担者と協働し読字や書字に注目したスクリーニングを行っていく。今後はGazefinderを用いた音読課題を用いることで、より容易にスクリーニングを行うことが可能となる予定であり、主訴が学習困難である児童だけでなく幅広い層から抽出を行っていく。これにより研究遂行に十分な人数をリクルートできると考えている。さらにサブグループ化された症例への介入を進めていく予定である。 認知表現系については、DTVP-3の日本語版の標準化を同時進行する予定である。より先進的な視覚認知および上肢微細運動の評価ツールとして活用できると考えている。また現在開発中のタブレットとペンデバイスを用いた書字評価方法は、微細運動障害に起因する書字の困難をもつ場合に指導効果も評価できるツールとなる可能性がある。 脳神経基盤研究については現在、音韻処理および意味処理課題を作成中であり、今年中にはこれらの脳活動測定が可能となる予定である。視覚表象に対する脳内プロセスを明らかにすることができると考えている。上記3分野で多層的な研究を発展させていく。
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Causes of Carryover |
当初予定していた眼球運動測定装置の購入において別予算にて購入が可能となったため今年度の使用額が減少した。また認知機能検査の進行が遅れていることから、人件費などが使用されなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
脳磁図検査に使用する映像音声装置の精度が予想以上に劣化していたため、次年度予算にて映像音声装置の更新を行う予定である。また認知機能検査などについては次年度から開始できる予定であり、予算も次年度以降に繰り越して行っていく予定である。
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