2016 Fiscal Year Research-status Report
障害のある子どものきょうだいと親がともに活きる支援プログラムの開発
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16K04803
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
阿部 美穂子 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (70515907)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 障害のある子どもの家族支援 / 障害のある子どものきょうだい / 家族のQOL / 家族支援プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、障害のある子ども(以下、同胞)の兄弟姉妹(以下、きょうだい)を育てる親の課題を明らかにし、その解決に向けた支援方法を開発し、効果を検証することを目的としている。 研究初年度である平成28年度は、親支援プログラム開発にむけた基礎資料となる、親のきょうだい児育成に関する支援ニーズを調べるため、集団インタビュー調査を実施した。対象は、障害のある子どもと家族の支援活動、あるいはきょうだい支援活動を行っている、5つの組織に所属する42名の親であった。各組織の所在地域と同胞の障害種は、富山地域(重度重複障害、発達障害)、神奈川県横浜地域(自閉症スペクトラム障害)、北海道東部地域(知的障害、自閉症スぺクトラム障害)、大阪地域(病弱、重度・重複障害、自閉症スペクトラム障害)、兵庫地域(知的障害、肢体不自由、自閉症スペクトラム障害)であった。 インタビューでは、「①きょうだいを育てるにあたり、気がかりなこと」、「②きょうだいを育てるにあたり、知りたいことあるいは、学んでみたいこと」、③「その他、自分自身に関して感じていることなど」の3点について、現在、あるいは過去に抱いていた考えや気持ちを尋ねた。一問一答形式ではなく、関連した話題で自由に話すように依頼し、内容を許可を得て録音、逐語録化した。 得られた回答を分析した結果、親の支援ニーズは、【きょうだいと親の関係に関すること】、【きょうだい自身に関すること】、【親自身に関すること】、【同胞との関係に関すること】、【サポート体制に関すること】、【家族内人間関係に関すること】の6つカテゴリーに分類された。さらに親の支援ニーズの特徴として、①きょうだいとのコミュニケーションとその心情理解、②きょうだいを取り巻く人々との関係性構築の促進、③親学びの促進、④きょうだい関係への介入スキルの促進、⑤家庭内人間関係構築の促進の5つが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1 本年度は、当初予定していた、障害のある子どものきょうだいを育てる親へのインタビュー調査を、富山県富山市、神奈川県横浜市、北海道標津町、大阪府大阪市、兵庫県三田市の5か所で実施した。得られたデータを分析し、本年度の目的としていた、きょうだいを育てる親の支援ニーズのカテゴリー化を図ることができた。また、結果を次年度発行の学内紀要に投稿した(現在受理審議中)。ただし、北海道札幌市で予定していたインタビューについては、相手方の都合により、次年度に実施する予定である。 2 本年度の研究の前提として継続して取り組んできたこれまでの研究経過をまとめ、国際学会である、International Association for the Scientific Study of Intellectual and Developmental Disabilities 15th World Congressにおいて研究発表、及び日本特殊教育学会第54回大会において研究発表および自主シンポジウムを行うとともに、第5回日本小児診療多職種研究会、及び全国重症心身障害児(者)を守る会第28回東海・北陸ブロック大会にて招待講演を行った。加えて、特殊教育学会学術誌の査読論文(共著第1筆者)、所属大学の研究紀要(単著)で論文として発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、平成28~31年度までの4年間にわたって行うものであり、次年度以降の計画は以下のとおりである。 平成29年度は、質問紙を用いて、きょうだいを育てる親の支援ニーズ調査を実施する予定である。具体的には、障害のある子どもの親の会組織などを通じて、きょうだいを育てる親300名程度(北海道、宮城県、富山県、神奈川県、京都府、大阪府、兵庫県)を対象に、平成28年度の面接調査に基づいて作成した支援ニーズ調査票、先に開発したBEACH CENTER Family QOL尺度(2003)の日本版(2015)を配布し、郵送にて回収する。家族の属性に応じて統計的処理を加えて比較検討し、同属性集団における特徴が見られた場合、その要因を支援プログラムの内容に反映する。 続いて、平成28、29年度の研究で明らかになった親の支援ニーズに基づき、平成30~31年度にかけて、きょうだいを育てる親支援プログラムの開発と効果検証を行う予定である。北海道釧路あるいは札幌地域(知的障害等)、富山地域(重度・重複障害、発達障害)、神奈川県横浜地域(自閉症スペクトラム障害)の障害のある子どものきょうだいを育てる親の希望者(一部、きょうだいも共に参加)、各地域10~15組程度を対象に、複数セッションからなる支援プログラムパッケージを開発し、きょうだいを育てる親ときょうだいのためのセミナーを開催する。参加前後に参加者にアンケート調査を行い、親のきょうだい観・子育てスキルの変容、活動内容に関する満足度について調べる。必要に応じ、統計的検討により効果を確認する。 上記の実践結果を踏まえて、最終年度には、開発したプログラムを「きょうだいと親がともに活きる支援プログラム」としてパッケージ化し、研究協力者が属する親の会等とタイアップし、ワークショップを開催して、地域に発信する。併せて、国内外の関連する学会で報告する。
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Causes of Carryover |
平成28年度予算のうち、物品費として計上していた分については、アンケート調査並びに映像データ処理用のパソコン、及びソフトウエアを購入する予定であったが、これらを実際に使用するのは、研究の経過上平成29年度となることから、最新機器を入手できるように購入を先送りした。また、データ入力の人件費についても、平成28年度分については、インタビュー調査のデータ量が予定より少なく不要となったため、平成29年度に行うインタビュー及び、アンケート調査分として先送りすることとした。さらに、旅費については、大阪におけるインタビュー調査の際、他の研究と連続して出張したため、全額を支出する必要がなくなったことに加え、北海道札幌市におけるインタビュー調査については、相手方の都合で、平成29年度に行うこととなった。以上のことから、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、まず、平成28年度から先送りとなった北海道におけるインタビュー調査1件、及び、新規に北海道、宮城県、富山県、神奈川県、京都府、大阪府、兵庫県の各地域における、障害のある子どもを育てる親組織を対象に、きょうだいの育成に関する課題について、アンケート調査を実施する予定である。そこで、平成28年度の未使用額は、まず物品費として、先送りしたデータ処理用のパソコンとソフトウエア購入に充てる。旅費は、同じく先送りとなった北海道札幌市におけるインタビュー調査に用いるとともに、平成29年度分の旅費に加えて各地域の親組織に対するアンケート依頼訪問の費用とする。人件費は、アンケート調査回答のデータ入力に使用する。なお、その他費用については、平成29年度のアンケート調査用の印刷諸経費、返信用切手代等が高額になると予想されることから、それに補填する。
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