2021 Fiscal Year Research-status Report
障害のある子どものきょうだいと親がともに活きる支援プログラムの開発
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16K04803
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Research Institution | Yamanashi Prefectural University |
Principal Investigator |
阿部 美穂子 山梨県立大学, 看護学部, 教授 (70515907)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 障害児のきょうだい支援 / 障害児の家族QOL / 障害児家族への支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、第一研究として、収集した「きょうだい児を育てる親へのアンケート」についてきょうだい児を育てる親の悩みに関する自由記述の質的分析を行った。研究では、北海道・北陸・関東・近畿・中国に所在する特別支援学校、発達支援センター、障害児(者)親の会等、計30か所に所属する親から、匿名により得た281項目の意味内容をきょうだい児の年齢3群(幼小・中高・成人)ごとにカテゴリーに分類し、きょうだい児のライフステージによる相違や特徴を明らかにし、家族支援プログラム開発の示唆を得ることを目的とした。その結果、各群共通の6カテゴリーが見出された。「きょうだい児の人間関係への懸念」には全年齢群で最多数の項目が含まれ、「同胞の存在がきょうだい児の将来の生活に負担となる懸念」は成人群で増加及び具体化した。また全年齢群に一定数の「きょうだい児と親の精神的負担感」が見出された。分析から「幼少期の子育て実質的支援」「幼児期からのきょうだい児理解支援」「中高生期における精神的支援」「成人期の情報的支援」に合わせ、全ライフステージを通じた「親子のコミュニケーション促進支援」「仲間づくり支援」の必要性が示唆された。 次に、第2研究として、上記の悩みアンケートと同時に収集した「きょうだい児を育てる家族QOL」に関する調査データの量的分析を実施した。きょうだい家族QOLを構成する共通因子を探るとともに、同胞の障害種、きょうだい児の年齢・出生順の属性と、きょうだい家族QOLとの関連性を検討した。因子分析の結果、「家族内環境要因」「家族外環境要因」の2因子が見い出された。下位尺度間比較では、「障害種」「年齢」「出生順」にかかわらず、「家族内環境要因」得点が「家族外環境要因」得点より有意に低く(p<.001)、これらの外的属性に依らず、家族内の様々な要因がきょうだい家族QOLの質に関与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は、「きょうだい児を育てる親へのアンケート」について、きょうだい児を育てるにあたっての悩みに関する自由記述を分析し、得られた知見について研究論文にまとめて発表することができた。さらに、「きょうだい児を育てる家族QOL」に関する調査データの量的分析を実施し、きょうだいが育つ家族のQOLを構成する共通因子を探り、同胞の障害種、きょうだいの年齢・出生順の属性と、きょうだい家族QOLとの関連性を明らかにして、日本特殊教育学会、及び、日本LD学会の年次大会でその成果を発表することができた。 しかしながら、当初予定していた対面でのきょうだい児を育てる親への支援プログラムのフォローアップセッションは、新型コロナウイルス感染症の流行の状況が落ち着かず、昨年度に引き続き、断念することとなった。そのため、昨年度同様に、関係者には、学会での発表、及びオンライン上に掲載した論文をもって研究成果を報告するにとどまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2021年度に引き続き、研究の仕上げとして、研究成果を地域社会に還元することを中心に研究を進める予定である。 具体的には、まず、「きょうだい児を育てる親へのアンケート」及び、「きょうだい児を育てる家族QOL」に関する調査データから、きょうだい児を育てることと、家族QOLとの関連についてこれまでの分析した結果をまとめ、障害のある人の家族支援のあり方についての知見を論文化する。 さらに、延期となっていたきょうだい児を育てる親への支援プログラムのフォローアップセッションを実施する方法を探り、本研究で開発した「きょうだい児育成支援プログラム」について、関係者に報告するととともに、その内容の長短を検討し、プログラムの改善・発展に向けた示唆を得る。
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Causes of Carryover |
2021年度中に参加者に対するフォローアップセッションを実施し、フォローアップデータの取集と研究成果のフィードバックを行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症が収縮せず、実施できなかった。よって、その開催にかかる費用はそのまま(講師謝金、スタッフ謝金、資料印刷費等その他の諸経費)が持ち越しとなった。 次年度は、最終結果をまとめて公表するため、上記の延期となった研究活動を実施する。もし対面実施が難しい場合は、オンライン実施とし、資料をWeb上で公表することも検討する。研究費はそのために使用する。
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