2017 Fiscal Year Research-status Report
前頭葉血流分離度測定を用いた自閉症スペクトラム児者の評価と訓練プログラム開発
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16K04842
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Research Institution | Bunkyo University |
Principal Investigator |
成田 奈緒子 文教大学, 教育学部, 教授 (40306189)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 近赤外線酸素モニター / ペアレンティング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、これまで申請者らが研究、開発を進めてきたスイッチングタスクに呼応した前頭葉酸素化ヘモグロビン濃度変化における分離度の左右差による自閉症周防ペクトラム(ASD)の補助診断システムとそれを用いた訓練システムの開発を目指している。 今年度は、前年度の結果を踏まえ、被験者数を増やし、再度詳細な質問紙を用いてASDの診断基準と照らし合わせて被験者を厳選した上で複数回の実験を行った。被験者は、自分の意思で実験に参加したTD者19名(6-47歳,男性5名,女性10名:平均年齢26.6歳)とASD者15名(7-55歳,男性8名,女性7名:平均年齢22.3歳)である。ASD者はいずれも専門医により診療機関において診断を受けているが、今回さらにPARS,及びA=ASDの質問紙を行い、診断を確定した。すべての被験者には事前に実験の趣旨を説明し、文章による承諾を得た上で実験を行った。実験の方法は申請者らの既報( Journal of Pediatric Neurology(2012) 10:1-8.)に基づいて行ったが、前年度までの結果を踏まえ、今年度はプログラムを一部変更し、図形の数を4個に固定し、これを6クール行った。また、測定部位は左側背外側部に固定した。測定された酸素化ヘモグロビン濃度変化よりTD群とASD群の重み付分離度を算定し平均した結果、前頭葉左側において、TD群が3.86+/-14.00、ASD群が0.63+/-1.33となったが。有意差が検出されなかった。一方で、被験者に対し行ったストループテスト、抽象語テスト、HTP絵画テストなどは半年間のトレーニング・教育プログラムの施行後、平均的に成績が改善しており、今後これらのデータをさらに集積、解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においては、既存の方法に頼らない、新規で独自のASD診断補助方法が用いられることが必須の課題となっている。申請書に記載したとおり、まずはこの補助診断法の確実性を問うことが今後の研究の信頼性を担うため、本年度は本方法の汎用性を検証することがもっとも重要なタスクであった。今回、前年度より大幅に被験者を増やし、また小児被験者を増やし、ワイヤレスNIRSを用いた測定方法を試みた。その結果、小児被験者が多いこともあり、測定の際の体動による影響が大きかったと考えられた。この点については、今後さらに測定システムの改善を目指す。また、今年度は被験者への長期的な介入を開始しており、その成果も少しずつではあるが獲得されている。こちらに関しても、今後検証を続けながら汎用性を獲得したいと考えており、まだまだ改善すべき点はあるものの、当初の研究目的に沿い、改善の余地の十分あるデータが蓄積されており、進捗状況としてはおおむね順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果より、ASD者における前頭葉での、刺激に呼応する血流量の切り替え反応が遅延することが示されている。そして、そのことに着目した家庭での指導プログラムを保護者に教育することと、ASD児者自身に対する直接介入の成果が認められた。平成30年度は、これらの結果を踏まえ、まずは、さらにデータを集積する。具体的には新規被験者数をより増加させて、これまでと同様の実験を行うことで、安定した結果の再現性と有意差の検出を目指す。また、より正確にASD者をTD者から区別できる補助診断法の確立を目指すため、被験者の体動による測定誤差を減らすべく、課題提示方法の工夫や、プログラムの工夫を行い、課題への集中の維持などを目指す。一方で、訓練プログラムとしての家庭支援方法と介入方法をペアレンティングの重要性として特別支援教育に生かして低減していけるよう、得られたデータを整理解析していく作業を同時進行で行いたい。そして、最終的にはこれら累積した成果をASD者に対する、適切な前頭葉-情動-視床下部機能制御訓練プログラムとして臨床的に還元できるよう、開発を試みる。
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Causes of Carryover |
実験計画におおむね沿って遂行していたが、データ整理のアルバイト人数の増減等により、未使用の金額が生じた。次年度も引き続きデータ集積と解析を行っていく予定であるため、繰り越して使用する予定である。
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