2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K04847
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
高橋 あつ子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (40508230)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 授業づくり / 多様性 / 特別支援教育 / 自己調整学習 / 協同学習 / 学校環境適応感尺度 |
Outline of Annual Research Achievements |
公立学校3校の校内研究を中心に、UDLに基づく授業づくりをするプロセスに生じる課題および、授業改善の具体とその成果を探った。2校において、学校環境適応感尺度(アセス)を用い、介入前後で変化を検討した。A小学校においては、教師サポートや友人サポートが高い傾向があったため、協同学習を柱にUDL授業づくりを重ねたところ、1年目に学級離脱が減り、2年目には学習活動への関与が増え、思考の深まりを目指す授業が増えた。B中学校においては、初年度前半は、UDL概念の啓発と授業スキルの体験学習を基盤に、授業を通して学ぶ生徒の姿をみとる協議会を実施。学び方の多様性に気づき、複線型の対応を準備するようになっていった。C中学校では、授業前の指導案検討を通して、検討に参加する教科や学年の教員がUDLを具体化する発想を鍛えていけた。複数の学習活動を用意し、生徒が自己調整する場面を盛り込む等、従来型の授業からの脱皮が見られ、B中学校と間で、両校の校内研究に研究主任が参加するなど、研究の進め方を学びあう場面も見られた。 なお、UDLの国際的な動向を把握するために、CASTの研究員であるルイ・ロード・ネルソン研究員を招き、ワークショップを行った。参加した教員にとって、3原則、9ガイドラインの具体をグループで話し合う活動を通してUDLを体験的に学ぶこととなった。また、研究協力者のバーンズ亀山静子講師からUDLと評価について学んだ。 多くの教員研修を通して、UDLを学び授業づくりに生かす際の課題を収集した。日本においては、「すべての子供にわかりやすい授業」のために基準を下げる発想が根強い。そうではなく、個々の子供がそれぞれに伸びるための「学びのエキスパートを育てる」というUDLの中心概念の理解を促進する必要がある。そのためにも自己調整学習や協同学習をの技法をオプションとして活用できることが重要と思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
授業づくりや構内研究の実践を通して、質的な情報の収集は計画通りに進んでいるが、教師対象の量的データの収集と検討は遅れている。 これは、本研究への協力とともに、校内研究の計画や成果も重視する必要があるために起きている。3校とも一定の効果測定は求めているので、学校や教師、児童・生徒の負担を最小限にし、かつ本研究の目的に適合した測定方法を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目を迎え、UDLをさらに計画的に推進する授業者の追跡と、教員研修における課題の収集を行う予定である。 また、CASTが指導している米国イリノイ州コロンバス市バーソロミュー学校区を視察し、多様な子供が学ぶ教室において、UDLの手法がどうインクルージョンの実現に貢献しているかを探るとともに、この数年の特殊教育からの移行の状況や近隣学区との特殊教育予算の比較等を通して、UDLの効果を検討し、日本で再現できるあり方を探る予定である。 3校の構内研究においては、教員の授業観と子供の学習観の変容を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
計画していたPCの購入が遅れたことと、研究協力校への教材や機器の提供を行う必要が生じなかったことから、当初の予算を下回った。また、研究指導を受けるために海外研究者を招へいしたが、その他からの支出で賄えた。研究協力者による海外情報収集の経費は、年度を越えての支出となったため、当該年度の支出が下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2年次には、PC購入を予定しており、海外情報収集も計画している。さらに、研究協力校でも教材提示など手法を追加する必要に伴って教材や機器の購入が予想される。加えて効果測定に予算投入する必要が出てきている。
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Research Products
(10 results)