2018 Fiscal Year Research-status Report
インクルーシブ教育システムにおける合意形成のプロセスに関する研究
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16K04861
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Research Institution | National Institute of Special Needs Education |
Principal Investigator |
横尾 俊 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所, インクルーシブ教育システム推進センター, 主任研究員 (90300714)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 茂樹 びわこ学院大学, 教育福祉学部, 教授 (80443331)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 保護者の学校に対する信頼感 / 合理的配慮提供に関する合意形成プロセス / 教育委員会の合理的配慮概念普及の取組 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度行った研究活動としては、前年度に行った障害のある児童生徒の保護者に対して、インクルーシブ教育システムにおいて学校に望む対応に関するアンケート調査の分析を行い、学校との合意形成においては、日々のコミュニケーションが円滑であることや、専門性が高いことが信頼感の醸成に重要であることが分かった。これらの観点で保護者の回答内容を整理すると、①子どもの性格やタイプをよく知り、それに沿った対応、②個人のできるところを伸ばす対応、③発達障害の理解をもとにした適切な対応、④子どもの気持ちに寄り添った対応、⑤教師同士の情報を共有、⑥保護者と子どもの情報を共有するためのコミュニケーション等の6つの内容に整理する事ができ、保護者と学校・教育委員会が円滑に合意形成を行う上で必要な要素と考えることができた。 このように、小・中学校においては、日々保護者とのつながりがあることからこうした信頼醸成を行い、円滑な合意形成を行う取組が行える可能性があるが、一方で、教育委員会では、保護者が接する機会が少ないため、行えることが限定される。市町村の教育委員会の指導主事等への聞き取りを行ったところ、現在は合理的配慮と合意形成の概念の普及を保護者や小・中学校に行っている現状にあることが分かった。教育委員会については、就学支援での合意形成が重要事項になると考えられた。 次年度の研究では、教育委員会の就学支援での保護者との信頼醸成の取組について情報収集し、どのような点が可能かについて検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、①意見調整の難しさの原因と対応方法、②公平性の観点と、子どもにあった教育的な支援のバランスの取り方、③保護者との信頼感の醸成方法、④担当者への支援内容と専門性の涵養に関する知見を得て、合意形成プロセスについてのガイドブックを作成することを目的としている。平成28年度には、①と②を文献や研究協議等で得られた情報等から分析を行い、早期からの支援を通して保護者と学校・教育委員会の間で信頼感を高め、その子どもに身につけさせるべき学習内容を中心にすることで、適切な合理的配慮の提供につながることが推測される知見を得ることができた。平成29年度については、③を中心に研究活動を行い保護者に対するアンケート調査から、信頼感の持てる学校や教育委員会の対応について明らかにし、合意形成で重要となる要素について考察することができた。④については、平成30年度に行うイギリスの海外調査と市区町村教育委員会へのアンケート調査を経て行う予定だったが、市町村の指導主事等からの情報収集を行ったところ、平成30年度までの状況では合理的配慮の周知レベルで合意形成までの取組は十分でないことが予想できたため、研究を一年延長し、令和元年度に市区町村教育委員会へのアンケート調査を実施することとし、あわせて海外調査も次年度に行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度に関しては、延期した市区町村教育委員会への抽出アンケート調査と、イギリスへの海外実地調査を行う予定である。アンケート調査項目と海外調査内容については、研究協議を通して決定しているが、延期を行ったことから見直し、修正を行う計画である。 見直しの際には、再度市町村の指導主事等から情報収集を行うとともに、令和元年度は研究協力者との研究協議会の予定をしていないため、研究分担者と連携し、確実に実施できるように打合せを行い、場合によっては研究協力者に助言を求める体制を維持しながら進める予定である。
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Causes of Carryover |
平成30年度に実施する予定であった市区町村教育委員会へアンケート調査は、市町村の指導主事等からの情報収集を行ったところ、平成30年度までの状況では合理的配慮の周知レベルで合意形成までの取組は十分でないことが予想できたため、研究を一年延長し、令和元年度に市区町村教育委員会へのアンケート調査を実施することとし、あわせて海外調査も次年度に行う事とした。そのため、次年度に資金を持ち越している。
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Research Products
(2 results)