2018 Fiscal Year Annual Research Report
Observation of electrostatic potential on the pore surface of porous coordination polymers by an accurate charge density analysis
Project/Area Number |
16K04866
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
久保田 佳基 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50254371)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Metal-Organic Framework / X線回折 / 放射光粉末回折法 |
Outline of Annual Research Achievements |
多孔性配位高分子(MOF)のガス分離への応用を考えるとき,その細孔表面の精密な形状とともに,細孔内の静電ポテンシャルの情報は大変重要である。本研究では,SPring-8の高輝度放射光を利用したX線回折実験と電子密度解析により,MOFの細孔内の静電ポテンシャルや電場勾配を『実験的に』明らかにすることを目的とした。 初めにガス吸着プロファイルが良くわかっている2種類のピラードレイヤー型MOFについて調べた。SPring-8の粉末結晶解析ビームラインにおいてガス導入システムを利用して粉末試料を加熱真空引きし,degas状態の粉末回折データを得た。そして,電子密度分布と静電ポテンシャルを求めた。金属に配位結合した酸素に着目し,細孔表面の静電ポテンシャルの傾きから電場勾配を求めた。銅周りの電場勾配はおよそ8~9×1010 V/mの値を持ち,これら2つのMOFではその値はほぼ同じであることが分かった。 同様な手法を用いて,ゲートオープン型の吸着挙動を示すinterdigitate型MOFのdegas状態について調べた。その結果,静電ポテンシャルが低いニトロ基の配位子分子と,高いビピリジン分子の中央付近が近接していることが分かり,degas相の安定化には配位子分子同士のπ電子相互作用に加えて,ニトロ基とビピリジン分子との間の静電的相互作用が効いている可能性が示唆された。このことは吸着圧力の閾値と関係していると考えられる。 ここまでMOFの選択的ガス吸着の機構解明までは至っていないが,ガス吸着その場測定システムの高度化とMOFにおける実験的静電ポテンシャル解析の方法は修得できたと考えている。今後,本手法を用いてdegas状態だけでなく,ガス吸着状態も含めて細孔内の静電ポテンシャルを調べ,MOFの吸着機構解明につなげていく必要がある。
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