2016 Fiscal Year Research-status Report
放射光全散乱によるナノPdの水素吸蔵非平衡状態における構造可視化
Project/Area Number |
16K04870
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
加藤 健一 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学総合研究センター, 専任研究員 (90344390)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ナノPd / 水素吸蔵 / 全散乱 / PDF解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノPdの水素吸蔵非平衡状態における構造可視化に向けて、放射光施設SPring-8のBL44B2で、全散乱計測用検出器システムを構築した。厚さ1mmのシリコンをセンサーとする半導体検出器モジュール(DECTRIS社製MYTHEN)を12個、散乱ベクトル方向に隙間なく並べることで、Atomic Pair Distribution Function (PDF)解析に必要とされるQ(散乱ベクトルの大きさ)>20Å-1の全散乱データを同時に得ることができるようになった。そのシステムを使ってバルクPdに加えて、ナノPdの予備的な全散乱PDF解析を行ったところ、原子が存在しないはずの距離に周期的なリップルが観測された。PDF解析に用いるQの上限値を制限するとそのリップルが軽減されることから、高いQ領域における統計精度が十分ではないことがわかった。全散乱データを精査した結果、計数が数万カウントを超えると、検出器の系統誤差が統計誤差に対して有意になり、計数したカウントに見合った統計が得られていないことが明らかになった。そのため、系統誤差を抑制する強度補正法を確立することに注力した。様々な実験的検証を行った結果、各センサーにおける系統誤差はお互いにランダムであることを利用した新たな強度補正法を考案し、数百万カウントに至るまで計数カウントに相当する統計データが得られるようになった。このような問題は全ての放射線検出器が抱えている問題であり、本研究で確立した方法は今後、様々な検出器への適用が期待される。このような強度補正法を組み込んだ検出器システムをオンラインガス吸着システムとリンクさせることで、ガス吸蔵下全散乱オンライン計測システムが完成し、ナノ構造可視化のための計測環境が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、構築した全散乱計測システムを使ってバルクPdの水素吸蔵下実験を行った。さらに、ナノPdについても予備的な実験を行ったところ、当初予期していなかった検出器由来の系統誤差の問題を発見し、その解決法を確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
検出器の系統誤差の問題を解決したことにより計測環境が整ったため、今後はナノPdの系統的な全散乱PDF解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初、全散乱データをPDF解析するためのワークステーションを購入する予定だったが、データ解析スキームの効率化によりワークステーションの必要性は低いと判断し、購入を控えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に国際会議での成果発表のための旅費や、発表論文のビジビリティ向上のためのオープンアクセス費に使用することを計画している。
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