2018 Fiscal Year Annual Research Report
Structure Visualization of Nano-PdH in a Non-Equilibrium State by Synchrotron X-ray Total Scattering
Project/Area Number |
16K04870
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
加藤 健一 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, 専任研究員 (90344390)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 放射光全散乱 / PDF解析 / 水素吸蔵ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、水素吸蔵特性を左右する固溶体α相から水素化物β相への転移点近傍における局所構造を放射光全散乱による原子二体分布関数(PDF)解析で明らかにすることである。初年度とその次年度は、目的達成に必要な計測システムの開発に注力した。具体的には、広いQ(散乱ベクトルの大きさ)レンジと高いQ分解能を両立する全散乱用検出器と、回転しているガラスキャピラリー内の水素ガス平衡圧力をオンライン制御可能な装置を組み合わせたシステムを構築した。最終年度は、この計測システムを用いて、代表的な水素吸蔵金属であるPdナノ粒子の全散乱データを水素ガス圧力を変化させながら測定した。これらのデータを全散乱構造関数に規格化した後、フーリエ変換することによりPDFが得られた。これらのPDFについて、110方向のPd-Pd間距離の相当する第一ピークと100方向に相当する第二ピークの幅の変化に着目したところ、α相とβ相では局所構造に違いがあることがわかった。平均として見ればα相もβ相も同じ面心立方構造であるが、局所的に見ると、α相に比べてβ相ではPdが110方向よりも100方向に2割程度大きく揺らいでいることがわかった。これは、拡散している水素の多くがPdが作る四面体サイトよりも八面体サイトのほうにトラップされた結果と考えるのが自然であるが、Pdの揺らぎの違方性が転移点近傍におけるPdまわりの水素の分布を知る手がかりになることを示唆している。
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