2017 Fiscal Year Research-status Report
1次元超伝導ー絶縁体転移と自己双対量子デバイスの研究
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16K04877
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
篠崎 文重 九州大学, 理学研究院, 教授 (80117126)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅野 貴行 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (00301333)
牧瀬 圭正 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (60363321)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 超伝導細線 / 位相揺らぎ / 磁気抵抗 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の背景には、「超伝導1次元における超伝導体の超伝導(S)―絶縁体(I)転移」がある。研究1年目には「超伝導位相スリップと磁束運動」という双対性の立場から、SI転移に関する理論と比較し、良い一致を得た。更に試料作成時の基板を選択することで、超伝導特性に特異な磁場効果として「負性磁気抵抗」を見出した。2年目に当たる29年度の実績は以下である。 1)この負性抵抗特性の詳しい解析を行った。細線化が進むと、抵抗(R)-温度(T)特性はブロードになる。その原因は「超伝導転移温度Tc直下で特に著しい熱的位相ゆらぎ」と「充分な低温まで存在する量子的位相揺らぎ」による。磁場(H)下での中間温度領域までは、完全に後者の揺らぎのみが抑えられること、及び、更にある温度以下の低温では、再び抵抗が復活する、いわゆる、re entrant effectの存在が明らかになった。 2)超伝導細線の途中にメゾスコピックなサイズを島状領域導入し、電圧(V)-電流(I)特性、R(T,H)を調べた。細線の幅=20nm, 細線長=1000nm, 途中の島サイズ=100nmx 100nmである。更に、この島数nをn=1,2,3と変化させ、その伝導特性を詳しく調べた。その結果、i)R(H)特性はnに依存するが、磁場に対して非対称な振る舞いを示すことが分かった。ii)低磁場では特徴的磁場依存性が見出された。即ち、負性抵抗ではなく、実質的な負の電圧が観測された。iii)n=1,2,3共に、低温でのR(H)精密測定から、R(H)に振動現象を観測し、概算ではLittle-Parks oscillationに相当すると思われ周期を観測した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
29年度の研究目標として、超伝導細線の輸送特性の測定・解明を挙げた。本研究のゴールは細線の自己双生量子デバイスの検討で、「Quantum Phase Slip Transistor」はその1例である。前項・業績の最後にも記したが、超伝導細線の中間構造として「島領域」を配した細線試料での磁場下での輸送特性は顕著な振る舞いを示した。「島構造なし」の場合、オーミックではないが、連続的変化を示す電圧-電流特性に、「島構造」を追加すると、明らかな不連続変化を示す振る舞いが現れた。これは「島領域」に量子的にトラップされた磁束量子数に応じて生じる現象と理解している。このように、最終年度に向け、順調に推移していると判断する。 研究成果の公表についても収穫ある年度であった。上記の内容に関しては、「島領域数」依存性、細線幅・長さ依存性、細線に生じる電気抵抗の詳しい温度・磁場・電流依存性を数多くの学会で発表した。 材料開発に関しても、将来を見据えた均質な細線試料を念頭に、作成を開始した。電子線リソグラフィー等で細線加工するが、まず2次元超伝導膜の作成、輸送特性の解析が必要となる。本研究では、Nb系に加えて新たに、MoRe, MoRu薄膜に注目し、構造解析、その他に今後の発展が期待される結果を得た。此の一部は論文で公表した。 以上の結果は1,2次元系合わせて、国際会議7件、国内会議6件を数えた。
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Strategy for Future Research Activity |
前項でも記述した材料開発を推し進め、目標とする高感度超伝導細線デバイスに向けた特性パラメターの評価を行う。具体的には現在、解析・評価を進めているMoRe系がある。詳しく述べると、合金試料の比率はMo75/Re25である。この系はスパッタ―法で作成し、アモルファス構造が指摘されているが、我々も確認済みである。超伝導臨界温度Tc~6Kで、X線構造解析からは、充分な均質構造を取っている。又、臨界磁場、超伝導ー絶縁体転移特性は、Nb系と大きく異なる点は見出されないが、詳しい輸送特性解析は不均質構造が原因と思われる振る舞いが確認された。 今年度前半は、本試料の合成比率Mo50/Re50,Mo25/Re75を持つターゲットを購入し、これらの材料でより均質で低抵抗シリーズ膜の作成を行う。得られた2次元膜で引き続き、基礎的物性であるTc, Hc2, 更に磁気抵抗の測定・解析から1次元化し、デバイス作成のために必要な非弾性散乱頻度の見積もりを行う。 後半はデバイス化を念頭に、高周波印加時の輸送特性・解析へ進む。
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Causes of Carryover |
次年度は本研究課題の最終年度であり、当初の目的を達成する為の試料作成、低温測定用寒剤等に支出が予定される。後者の負担増は分担者の勤務先変更に伴い、使用価格か上昇したことも念頭に置いている。又、最終年の30年度にも、予定されている国際会議に成果を発表する予定である。
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Research Products
(13 results)