2016 Fiscal Year Research-status Report
偏光ESR法によるバレートロニクス物質の微視的評価とバレースピンポンピング
Project/Area Number |
16K04882
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大島 勇吾 国立研究開発法人理化学研究所, 加藤分子物性研究室, 専任研究員 (10375107)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 単層遷移金属ダイカルコゲナイド / 電子スピン共鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、電子の「バレー」という量子力学的な内部自由度を有する単層遷移金属ダイカルコゲナイドが着目されているが、g値やスピン軌道相互作用といったバレーの微細構造は明らかになっていない。本研究は、ミリ波~サブミリ波領域のワイヤーグリッド偏光子を用いた偏光電子スピン共鳴(ESR)プローブを新たに開発し、バンドやバレーが制御された単層遷移金属ダイカルコゲナイドにおいてESRを観測することによってバレートロニクス物質の微細構造を明らかにすることを目的とする。 初年度は偏光ESRが測定できるプローブの開発を行った。偏光ESR法ではワイヤーグリッド偏光子2枚を組み合わせて使用するが、測定装置の感度の良し悪しは偏光子の性能で決まる。そこでレーザー微細加工で製作した3種類のワイヤーグリッド偏光子50/500μm, 50/50μm, 10/15μm(ワイヤー幅/スペース幅, 厚さt=40μm)のミリ波~サブミリ波領域におけるキャラクタリゼーションを行った。今回作製した3種類の中では50/50μmのワイヤーグリッド偏光子がミリ波~サブミリ波領域において平均的に良い性能を示したので、このタイプの偏光子を偏光ESR測定プローブ用に使用した。またワイヤーグリッド偏光子から近距離では偏光の効果は出ないことも今回のキャラクタリゼーションによって判明した。これは偏光子のスリット幅の干渉効果によるものであると考えられるが、直線偏光の効果が出るためには、使用する光の波長が長くなればなるほど距離を大きく取る必要があると判明した。 今後はこの装置を用いて、単層遷移金属ダイカルコゲナイドのESR測定を行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、初年度の前半でワイヤーグリッド偏光子のキャラクタリゼーションを行い、測定装置を完成させるはずだったが、今年度の設備備品として予算を計上していたミリ波~サブミリ波を検出する光検出器(InSbホットエレクトロンボローメーター)の納品がイギリスのメーカーの都合で大幅に遅れており、偏光ESRプローブが本来の性能を発揮できずにいる。光検出器の納品次第、単層遷移金属ダイカルコゲナイドのESR測定を行いたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在もInSb光検出器の納品を待っている状態だが、このまま納品されない場合、準光学素子の導入を検討する。次年度前半には偏光ESR測定の装置を完成させたい。 そして、遅れを取り戻すべく、ゲート電圧を印加しバンドが制御された単層MoS2において偏光ESR測定を行い、周波数-磁場プロットから伝導帯及び価電子帯のg値とスピン軌道相互作用を導出する。 また、レーザーの円偏光励起を利用する事により各バレーの分布を個別に制御し、ESRの強度に変化が生じるかを検証する。これにより系のバレー制御を微視的に評価する。
|
Causes of Carryover |
設備備品として光検出器(ホットエレクトロンInSbボロメーター)を計上しており、計画通り使用予定だったが、イギリスのメーカーの都合で納品が遅れている状況であり、来年度に繰り越す事となった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した額は、次年度に使用する予定である。
|