2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K04885
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
齊藤 健二 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (60397669)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | リン化モリブデン / 液相成長 / Oriented Aggregation / 水素生成電極触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、エチレンジアミンを溶媒とするソルボサーマル法により、出発物質の赤リン(Pn)をコア、MoPをシェルとするコンポジット構造体が得られることを見いだした。本構造体が得られた理由はPnの粒子サイズによるものと予想し、当該年度はPnを物理的、化学的にダウンサイズ化し、単一構造体を得ることを検討した。前者では、直径数マイクロメートルのPn粒子を約300ナノメートルまで縮小させた後、昨年と同様の条件で反応を行ったが、生成物の組成はコア-シェルを示すものであった。これは、粉砕処理によるPn表面の非晶質化に伴い、Moとの反応性が低下したためと考えられる。次に、既報(Wei, C. C. et al., Nano Lett. 2017, 17, 1240.)を参考にし、100ナノメートル前後のPnナノ粒子の化学合成も行ったが、目的の構造体は得られなかった。本ナノ粒子の表面に存在する保護基がMoとの反応を阻害し、Moの肥大化を助長したためと推察される。そこで、1)赤リンよりも反応性が高く、分散性の良い黄リンを出発物質とする、2)ガス状の還元剤(CO)を用い、金属Moの生成速度を調整することを検討した。粉末状態の黄リンは国内での入手が困難であるが、本研究の過程で比較的容易に得られることがわかったため、1)を検討するに至った。MoCl5と黄リンのDMF懸濁液中にCOをバブリングしながら加熱したところ、常圧下かつソルボサーマル法に比べて低温での反応であるにも関わらず、生成物中のMoとPの比率が単一構造に近い値を示した。黄リンを従来のPnに代えると、Pに対するMoの組成比と反応率は低下したことから、単一構造に近い組成のMoPが得られた主な要因は、黄リンであることが明らかとなった。以上の結果より、リン源と還元剤の種類を最適化することで、単一構造に近い組成のMoP結晶を合成することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MoPの非古典的単一機構成長を実現するには、溶存状態に近い、クラスターレベルの金属MoとPとを反応させる必要がある。昨年度はその基礎となる条件検討を行い、コアシェル構造ではあるが、MoPを溶液中で得ることに成功した。当該年度は、合成化学的および速度論的視点からMoやPの粒子サイズを減少させて反応性を向上させることを検討し、結果として単一構造に近い組成のMoP結晶を得ることに成功した。当該年度の研究により、均一な組成のMoP結晶を単一機構成長させための目処は十分に立ったため(「(3)今後の研究の推進方策等」参照)、本研究はおおむね順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針としてはまず、COのバブリング速度に対する金属Moの生成状態を動的光散乱法、FE-SEM、TEM等を駆使して詳細に調査する。また、黄リンの良溶媒(n-オクタノール等)をDMF中に加えることで、黄リンを溶存状態とする。これにより、MoP生成のパラメーターは金属Moに限定されるため、MoPの成長機構を解明し、制御する上で重要な知見が得られると考えられる。次に、CO以外の還元性ガス(H2, H2S等)を同様に検討し、金属Mo生成における電子移動のドライビングフォース依存性、しいてはMoPのサイズや形態の制御を行う。得られたMoP結晶を用い、H2生成電極触媒としての性能評価を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由としては、技術補佐員の自己都合退職により、当初の支出想定額との間に差が生じた。一方、次年度の使用計画としては、研究推進のための消耗品費および研究発表や交流のための旅費に関して、当初の計画通りに支出する。
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