2016 Fiscal Year Research-status Report
強磁力な新規ナノコンポジット型フェライト磁石の開発
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16K04900
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
山室 佐益 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 准教授 (10402653)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 酸化鉄 / ナノコンポジット / ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
磁性金属と鉄系酸化物(フェライト相)からなるナノコンポジット磁石を作製することを目的として,両相からなるナスケール複合組織を形成するための反応条件最適化に取り組んだ。固相あるいは液相プロセスを用いて,高温相としてのみ存在するFeO相を形成するための反応条件について検討した。また,得られたFeO相を共析反応により相分解して,フェライト相と磁性金属相(Fe)からなるラメラ状の複合組織を形成するための基本条件を抽出した。 1)固相プロセスによるFeO粉末の作製:FeO相が形成される組成領域は極めて狭い(800℃で1.5 at%Fe程度)。そこで,FeO単相を得るための条件について検討し,仕込み組成比Fe:O=49:51,焼成条件600~800℃・10 hで作製することにより,ほぼ単相のFeOを得ることができた。また,FeO相の熱分解がFeOを作製する際の焼成温度に大きく依存するという,当初予期していない結果も得られた。本件は,簡便にラメラ複合組織を形成する上で有用と考えられる。 2)液相プロセスによるFeOナノ粒子の作製:個々の粒子内にラメラ組織を形成したいため,作製するFeOナノ粒子の粒子径を100 nm程度まで拡大したい。出発原料の種類,ならびに界面活性剤であり且つ錯形成剤でもあるオレイン酸とオレイルアミンの混合体の添加量ならびに添加方法の影響について検討した結果,50 nmを超えるFeOナノ粒子を作製することができた。 (3)ラメラ複合組織形成のための基本条件の抽出:固相・液相両プロセスにより作製したFeO相について,その熱分解条件(加熱温度・時間)について検討した。その結果,400~500℃の範囲において分解が促進されることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,固相・液相両プロセスにおいてFeO相形成のための反応条件最適化を行うとともに,それらを熱分解してラメラ複合組織を得るための基本条件を抽出する実験を実施した。その結果,当初計画したFeO単相を得るための条件(試料粉末の混合組成,加熱温度・時間,冷却方法等),ならびに得られたFeO 相の熱分解条件(加熱温度・時間)についての概要を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では,最初の2年間においてはFe-O系酸化物に注力してFeOの作製・熱分解挙動の概要を明らかにした上で,最終年度にそこで得られた知見をCo添加したFe-Co-O系酸化物に援用して磁気特性向上について検討する予定であった。しかし,H28年度にCo添加した場合の予備実験を行ったところ,Fe-O系酸化物の場合と比べて熱分解挙動が大きく変化するため,Fe-O系酸化物における結果が直接的に役立つとは限らないことが判明した。また,Co添加により,大きな磁気異方性を有するCoフェライトの形成にともなう磁気特性向上が確認された。そこで,磁気特性の優れたFe-Co-O系酸化物の実験に効果的に対処するために,H29年度とH30年度(最終年度)の研究計画を入れ替え,最終年度に予定していたFe-Co-O系酸化物の実験を前倒しで進めることを計画している。Fe-Co-O系酸化物の形成条件ならびに熱分解挙動の条件最適化に取り組むとともに,ナノコンポジット磁石としての磁気特性の評価を実施する。
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