2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K04903
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
下条 雅幸 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (00242313)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / パターニング / 電子線 / プラズモン |
Outline of Annual Research Achievements |
表面プラズモン共鳴を利用したナノスケールの光回路や光素子に関する研究が注目されている。これらに関するこれまでの研究では、コロイド溶液から基板上に滴下した金や銀のナノ粒子を用いたものが多い。しかし溶液から滴下した場合、粒子の位置はランダムになってしまい、光の導波路などの機能を持った回路等を作ることはできない。本研究では、電子線を利用して、意図的な配置のナノ粒子構造体を作製する。具体的には、基板上にナノ粒子を2次元的に配置(第1段階)、電子線を用いて必要な粒子のみを基板に固定(第2段階)、不要な粒子を除去(第3段階)により行う。 予備的な研究の段階では、第1段階で化学的な結合を用いて2次元配列を作製していた。しかし、結合が強固すぎて、第3段階で不要な粒子を完全に除去できない問題点があった。第2段階では、電子線を照射した範囲よりも広い領域で、ナノ粒子が固定されてしまう問題点があった。本研究は、これらの各段階における問題点の解決を目指すものである。 第1段階については、よりゆるい結合方法を模索する。第2段階に関しては、電子線の広がる状況を、モンテカルロ法を用いてシミュレーションし、固定領域が広がってしまう原因を検討する。第3段階については、洗浄するときの溶液について検討を行う。 今年度は、第2段階の電子線の散乱範囲に関する検討を行った。その結果、電子線が基板に入射し、基板内で後方散乱によって基板表面に戻り、そこで粒子が固定されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第2段階では、電子線照射により、ナノ粒子の周囲に存在する有機分子を分解し、粒子と基板が固着する。今年度は、このとき、電子線の照射範囲よりも固定領域が大きくなってしまう原因について検討を行った。そのために、モンテカルロ法により電子の散乱シミュレーションを行うソフトウエアの開発を行った。モンテカルロ法とは、乱数を用いて物理的な現象を再現するもので、物質中での電子の散乱をシミュレートするためには電子が散乱するまでの距離、散乱する方向を計算する。一般的に、バルクの物質中の散乱状況を計算するソフトは多数あるが、ナノ粒子中の計算を行うものは見当たらないため、独自で開発を行った。 作成したソフトを用いて、 (i)電子線がナノ粒子に入射し、ナノ粒子中の原子によって前方へ散乱し、基板に到達することで、有機分子を分解する範囲、(ii)電子線が基板に入射し、基板中で後方散乱することで、基板表面に到達し、有機分子を分解する範囲の2つの状況を解析した。 その結果、(i)の影響も少しあるものの、(ii)の影響が非常に大きいことが明らかとなった。また、求まった範囲は実験の結果とよく一致した。このことから、基板中の後方散乱を抑えることで、粒子が固定される範囲を小さくできるものと考えられる。今後、これについても実証実験を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況欄にも書いたように、粒子が固定される範囲は、基板からの後方散乱が大きく影響していることが明らかとなった。このことから、基板中の後方散乱を抑えることで、粒子が固定される範囲を小さくできるものと考えられる。今後、これについて基板の種類や厚さを変えて実証実験を行う予定である。 これに加えて、第1段階については、よりゆるい結合方法を模索する。また第3段階については、洗浄するときの溶液について検討を行う予定である。 また、現在はAuナノ粒子を用いて研究を進めているが、Au以外の粒子についても検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
今年度はシミュレーション・ソフトウエアの開発(自作)に注力したため、一部の薬品の購入を次年度に回す予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
シミュレーション・ソフトウエアの開発はほぼ終了したので、実験による研究も進めていく。
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