2017 Fiscal Year Research-status Report
ガレクチンネットワークを基盤とする運動機能障害の解明と生活習慣リスク診断
Project/Area Number |
16K04910
|
Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
宮西 伸光 東洋大学, 食環境科学部, 教授 (80372720)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
根建 拓 東洋大学, 生命科学部, 教授 (50375200)
|
Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
|
Keywords | ガレクチン / 相互作用 / 固定化技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
健康状態に依存した生体内の種々の代謝状況により複雑に構造変化するAGE群と、様々な分子形態依存的に挙動するガレクチンネットワークとの関連性およびガレクチンネットワークと疾患との関連性について前年度より継続して解析を行い、本年度では以下の成果が得られた。 ガレクチンファミリーは代謝段階の発生初期の発生物と予測されるAGE群にはいずれも相互作用を示さないが、ガレクチン8については他のガレクチンとは異なっており初期のAGEに対して弱い相互作用を示す事から、本年度はガレクチン8のバイオセンサチップへの固定化方法について重点的に条件検討を行い、その結果、感度の向上が確認された。また、各ガレクチンファミリーについても同様に、N-末端領域のCRDのみを有するガレクチン、C-末端領域のCRDのみを有するガレクチン、タンデムリピート型のガレクチンについてはN-末端領域のCRDとC-末端領域のCRDの間に存在するリンカーペプチドを取り除いたガレクチンのそれぞれを、エバネッセント波励起型マイクロスキャナによる解析において最適となるようなバイオチップへの固定化条件を継続して検討し、前年度よりも感度の向上を確認した。さらに、本バイオセンサチップへの固定化に関する一連の固定化技術については、本バイオセンサチップに特化したマイクロアレイヤーの検討を様々なタイプのマイクロアレイヤーにおいて進めるとともに、各ガレクチンのタイプに合わせた固定化条件をそれぞれ検討し、検出感度及び精度の向上を確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様々なタイプのガレクチンファミリーのうち、ガレクチン8は他のガレクチンと異なり初期のAGEと弱い相互作用を示す事を初めて明らかにした。この事から、これまでに特異的に検出することが難しかった初期段階のAGEを捉える事に成功している。また、ガレクチン8は固定化方法を検討する事で初期のAGE検出の高感度化が可能である事も明らかとなり、様々な固定化法についても随時検討を進めている段階である。続いて、次の段階としてAGEの“糖領域の構造”がガレクチンファミリーとAGEとの相互作用の阻害物質になり得るかどうかについて検討を開始している。糖尿病患者や食生活の乱れなどにより起こる長期高血糖状態は様々な合併症を引き起こすが、糖尿病や長期高血糖状態を起因とするAGEの発生は生体内におけるガレクチンネットワークを阻害することで様々な合併症を誘発している可能性が高い。AGEの糖領域の構造がガレクチンファミリーによって特異的に認識されるかどうかについては、本課題に関するこれまでの一連の研究において明らかにしているグリセロアルデヒド-AGEとガレクチン3との特異的相互作用やガレクチンファミリーとメチルグリオキサール-AGEとの低い相互作用などの種々の研究成果を基盤情報とし、部分構造の異なるAGEあるいはAGE予備群と位置付ける事ができるような糖構造を有するペプチドなどとガレクチンファミリーとの相互作用を検討する段階まできている。今年度の研究進捗において得られた成果をもとに、ガレクチンファミリーとAGE群との相互作用阻害剤開発への研究展開が期待できる。最終年度に向けて「培養細胞を用いた疾患系モデル構築およびマイクロチップにおける評価」の基盤情報の集積は順調に進んでおり、一連の研究計画の2年目の総括として「おおむね順調に進展している」と考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度では本研究課題のこれまでの成果を踏まえ、次の段階としてAGEの“糖領域の構造”がガレクチンファミリーとAGEとの相互作用の阻害物質になり得るかどうかについて検討を進める。得られた成果をもとにガレクチンファミリーとAGE群との相互作用を阻害する分子構造を明確にし、阻害剤開発へ研究を展開する。糖尿病や長期高血糖状態を起因とするAGEの発生は生体内におけるガレクチンネットワークを阻害することで様々な合併症を誘発している可能性が高いことから、阻害剤の開発は長期高血糖状態から派生する様々な合併症を予防する新薬開発の一助となる。さらに、培養骨格筋細胞であるマウス大腿筋由来C2C12細胞を種々の糖濃度で培養し、生体内で起こりうる血糖状態の変動を再現するとともに、本細胞に運動刺激を加える事で血糖状態と運動刺激、AGE化とガレクチンネットワークとの関連性について細胞レベルにおいて相関関係を明確にする。さらに分化状態をコントロールすることで、筋肉形成期や筋管成熟期、老化時におけるAGEと運動機能との関係性について明確にする。生体内におけるガレクチンネットワークを基盤とする包括的ネットワークと、糖尿病や長期食習慣の乱れなどにより生じる長期高血糖状態が誘発する合併症およびAGE群との関係性について網羅的に挙動把握が可能なマイクロチップを用いて、種々の合併症発症リスク診断を行うとともに、さらに本研究課題の次期展開としてエバネッセント波励起型マイクロスキャナによる解析に運動強度、周期、回数を同時に解析する“多階層解析型”の解析手法を開発導入することで、慢性的な食生活習慣に起因する生活習慣病リスク評価と生活習慣に起因する運動機能障害リスクモニタリング、さらに、適切な運動不可を中心とした生活習慣の改善とその状況把握が可能な新しい概念のバイオセンシング構築を目指す。
|
Research Products
(4 results)