2016 Fiscal Year Research-status Report
オンチップ免疫粒子電気泳動原理によるヒト乳がんエクソソームの1粒子解析
Project/Area Number |
16K04915
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
赤木 貴則 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (80401149)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エクソソーム / マイクロ流体デバイス / 細胞外小胞 / 細胞外微粒子 / マイクロベシクル / 乳がん / ゼータ電位 / 粒径 |
Outline of Annual Research Achievements |
体液による高信頼性診断のマーカーとして注目を集める細胞外微粒子である「エクソソーム」の解析法について研究を行った。エクソソームを用いる実験に先立ち、直径30nmの微小なエクソソーム計測を可能にする性能向上を目指して、チップ型エクソソーム解析システムの光学系の最適化を検討した。測定条件および画像解析法を改善し、サイズ標準ポリスチレンビーズを用いて評価したところ、従来では50nm以上だった検出感度を、30nm以上までに改善した。 この条件を用いて、ヒト乳がん細胞株のうち、悪性度の指標として知られる表面HER2タンパク質の発現量が高い細胞株 (SK-BR-3とBT474細胞)と低い細胞株(MDA-MB-231とMCF7細胞)に由来するエクソソームを含む細胞外小胞(EV)の粒径分布とゼータ電位の計測実験に着手した。エクソソーム試料は、細胞を無血清培地で48時間培養した後の培養上清から分画遠心法で精製した。得られた分画試料に含まれる粒子の粒径とゼータ電位をチップ型エクソソーム解析システムで計測した。1mlあたり1億個の粒子となるように濃度を調整し、分析チップのマイクロ流路に導入し、暗視野光学系で検出した。ブラウン運動解析は粒子の重心位置をトラッキングして拡散係数を求め、アインシュタイン・ストークスの式により算出した。その結果、4種類全ての細胞株から分泌されたEV試料中に、30-50nmの粒子が全体の60%程度存在することを確認した。従来装置では得られなかった粒径分布を正確に把握できることが示された。また、粒子電気泳動実験を応用することにより、30nmまでの粒子の粒径とゼータ電位を計測できることを確認した。得られた成果は、雑誌論文1件、学会発表16件(国際学会7件、国内学会9件)、図書2件として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EVの計測実験に先立って、チップ型エクソソーム解析システム試作機の光学系を最適化し、30nmまでのエクソソームの計測を可能にするべく検出感度の改善を検討した。その結果、これまでの50nm以上の検出感度を30nm以上に改善した。 この条件を用いて、ヒト乳がん細胞株のうち、悪性度の指標として知られる表面HER2タンパク質の発現量が高い細胞株 (SK-BR-3とBT474細胞)と低い細胞株(MDA-MB-231とMCF7細胞)の粒径とゼータ電位の計測を行った。エクソソーム試料は以下の手順で準備した。細胞を無血清培地で48時間培養し、その培養上清を分画遠心法で分離、精製した。具体的には、まず、細胞片などの大きい粒子を取り除くため、培養上清を300×g で10 分、2,000×g で20 分、10,000×g で100 分遠心した。エクソソームを含む上清を100,000×g で200 分遠心してエクソソームを沈降させた。10 mM HEPES 緩衝液で懸濁した後100,000×g で200 分遠心して、エクソソームを含む細胞外小胞(EV)の分画を得た。EV分画を10 mM HEPES 緩衝液で懸濁した。分析チップのマイクロ流路にEV試料を流し込み、個々のEVのサイズおよびゼータ電位を解析した。粒径分布は、ブラウン運動解析から得られる拡散係数からアインシュタイン・ストークスの式を用いて算出した。また、パーティクル電気泳動実験により得られる電気泳動移動度(EPM)からヘンリーの式を用いて算出した。4種類全ての細胞株についてEVに30nmまでの粒子が存在し、その粒径とゼータ電位を計測できることを明らかにした。また、エクソソームマーカータンパク質であるCD9、CD63、CD81、HSP70およびHER2の発現量について、ウェスタンブロットによる解析に着手した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、改良したチップ型エクソソーム解析システム試作機を用いて、4種類の乳がん細胞株由来のEVの粒径およびゼータ電位の測定実験を行う。加えて、抗体を用いる免疫粒子電気泳動に着手し、タンパク質発現量を微量のサンプルで評価できる可能性についての検討を開始する。ウェスタンブロット解析の条件検討は前年度に引き続き進める。これらの表面タンパク質に関する検討は、まずエクソソームマーカータンパク質であるCD9と乳がん悪性度マーカータンパク質であるHER2について進め、その後CD63、CD81、HSP70などの他のタンパク質についても検討する。 また、本手法のエクソソーム診断への応用可能性の検討に向けて、培養上清由来エクソソームとヒト体液を混合したスパイクモデルについての検討に着手する。
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[Presentation] Evaluation of diameter and surface proteins of individual extracellular vesicles using microcapillary chips2016
Author(s)
T. Akagi, H. Kishita, Y. Suehiro, S. Oniyanagi and T. Ichiki
Organizer
3rd COINS Int’l Symp., Towards Smart Health Society -Challenge of Kawasaki based Medical Innovation- December 15, 2016 (p.36, P-14, December 15, 2016,
Place of Presentation
Kawasaki City Industrial Promotion Hall, Kanagawa, JAPAN
Year and Date
2016-12-15
Int'l Joint Research
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