2017 Fiscal Year Research-status Report
オンチップ免疫粒子電気泳動原理によるヒト乳がんエクソソームの1粒子解析
Project/Area Number |
16K04915
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
赤木 貴則 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任研究員 (80401149)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | エクソソーム / ゼータ電位 / 免疫粒子電気泳動 / 電気泳動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度に研究を進める過程において、ゼータ電位計測の再現性が得られていないことが判明した。この課題は本技術において極めて重要であるため、その課題を解決する検討を優先的に進めることにした。 すなわち、エクソソームを含むナノ粒子をマイクロ流路で観察すると、時間の経過とともに速やかに粒子の数が減少することがあることを観察した。この要因として、粒子と壁との電気的な相互作用あるいは疎水的相互作用の効果であると考えた。そこで、複数のメーカーからコーティング剤を入手し、マイクロ流路のコーティング方法について比較、検討した。モデル粒子としてナノビーズを用いて観察したところ、未コーティングの流路では、負電位ナノ粒子(直径100 nm)は粒子の減少は観察されなかったが、電気的中性粒子(直径100 nm)および正電位ナノ粒子は粒子が減少した。一方、最適なコーティングを施した流路では、電気的中性および正電位をもつナノ粒子の減少は観察されなかった。さらに、電気泳動を印加して電気浸透流を発生させた場合においても、コーティングが安定であることを確認した。 抗体と結合したエクソソームの表面電位は正電位の方向に表面電位がシフトすることから、免疫粒子電気泳動実験において、粒子と流路壁との相互作用は重要である。従って、本年度の検討では、エクソソームの免疫電気泳動を再現性よく行うために、重要な基礎技術を構築できた。 本年度までに得られた成果は、学会発表12件(国際学会6件、国内学会6件)として発表した。その中で、エクソソームに関する国内学会およびナノ粒子医療に関する国際学会で優秀発表賞を受賞した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エクソソームのゼータ電位の計測を進める過程において、再現性の課題を明らかにした。その要因として、エクソソームがマイクロ流路に吸着し、流路の表面の電気的状態を変化させていることであると推察した。特に、抗体と結合したエクソソームの表面電位は正電位の方向に表面電位がシフトすることから、免疫粒子電気泳動実験において、粒子と流路壁との相互作用は極めて重要である。そこで、再現性の良いゼータ電位計測を実現するための検討を進めた。 複数のメーカーからコーティング剤を入手し、マイクロ流路のコーティング方法について検討した結果、安定で、吸着を抑制するコーティング技術を構築できた。この流路を用いると、ナノ粒子のゼータ電位が再現性良く計測できることを確認した。この知見は免疫粒子電気泳動原理に基づくエクソソーム解析方法の基盤技術として極めて重要な成果であることから、当該技術開発はおおむね順調に進展したと判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度までの成果をまとめることを目指す。すなわち、改良したチップ型エクソソーム解析システム試作機を用いて、乳がん細胞株由来のEVおよびエクソソームの粒径およびゼータ電位を指標した解析法について検討を進める。 さらに、本手法を含めたエクソソームの応用技術について、実用化に向けて必要な課題等について、知財戦略等の側面などから検討を行う。
|
Research Products
(12 results)