2016 Fiscal Year Research-status Report
高精細集束イオンビーム装置を用いた高Q値ダイヤモンド微小共振器の実現
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16K04918
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高島 秀聡 京都大学, 工学研究科, 助教 (00432162)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 微小共振器 / マイクロデバイス / ダイヤモンド |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、物質と光との強い相互作用を実現するため、高Q値を持つ微小共振器の開発が盛んに行われている。ダイヤモンドは、物理的・化学的に安定、紫外域から赤外域まで透明、さらに、非線形性が高いという特徴を持つ光材料として優れた物質である。そこで、本研究では、高精細集束イオンビーム装置を用い、ダイヤモンドを加工し、高Q値微小共振器の作製を目指す。これにより、超低消費電力レーザーや、高効率波長変換素子といった、従来の性能を凌駕する光デバイスに加え、量子情報通信用光源である単一光子源のような新規デバイスの実現が期待出来る。 平成28年度は、時間領域差分(FDTD)法を用いて、作製が比較的容易だと考えられる、周期的な溝を加工したダイヤモンド薄膜と直径300 nm程度のナノ光ファイバとを結合させたシステムについて計算を行った。その結果、ナノ光ファイバとダイヤモンドでは実効屈折率差が大きく異なるため、光ファイバ中を伝搬する光がダイヤモンドによって強く散乱され、透過率が著しく減少するということがわかった。 次に、ダイヤモンドを加工するための予備実験として、高精細集束イオンビーム装置を用いて、シリカガラスやアルミニウム基板上に周期的な微細構造の作製を行った。その結果、装置モニタ上の視野領域を加工領域よりも十分大きい数十マイクロメートルに設定しても、ナノメートルオーダーでの微細構造の加工が可能なことがわかった。このことは、高倍率モードでの加工領域を小さくできることを意味しており、加工時間の短縮につながる成果だと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近年、次世代の光デバイスを実現するため、光と物質とを強く相互作用させたシステムの開発が注目されている。ダイヤモンドは、化学的物理的に安定、紫外域から赤外域まで透明、かつ、非線形性も高いという、光材料として優れた特徴を持つ。このため、ダイヤモンドを用いて、光ファイバへ入出力ポートを持つ微小共振器を作製することで、光ファイバベースの新しい光デバイスへの実現が期待できる。 当初の予定では、ダイヤモンドを円盤状に加工した構造についてシミュレーションを行うことを想定していた。しかし、ナノ光ファイバ上に外部グレーティングを結合させることで光共振器を実現できるという研究が報告されたため、同様な構造として、周期的な溝をつけた厚さ数百 nmのダイヤモンド薄膜と直径数百 nmのナノ光ファイバとを結合させたシステムについて計算を行った。その計算によると、光ファイバとダイヤモンドでは実効屈折率が大きく異なるため、ファイバ中を伝搬する光がダイヤモンドによって強く散乱され、透過率が著しく減少するという結果が得られた。この問題を解決するには、両者の実効屈折率を小さくする構造について検討する必要があると考えている。 また、高精細集束イオンビーム装置を用いてダイヤモンドを加工する予備実験として、光ファイバやアルミニウム基板上に周期的な微細構造の加工を行った。その結果、微細構造よりもはるかに大きい数十マイクロメートルの視野で加工しても、ナノメートルオーダーの精度で加工が可能なことがわかった。これは、高精細集束イオンビーム装置を用いた場合、すべての加工領域において高倍率で加工する必要がない事を意味しており、加工時間の短縮につながる成果だと考えられる。 さらに、関連する学会に参加し情報収集を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の計算により、ナノ光ファイバ上にダイヤモンドの周期構造を結合させたシステムでは、実効屈折率差が大きいためナノ光ファイバの伝搬損失が大きくなるという結果が得られた。そこで、今後は、両者の実効屈折率差が小さくなるような構造について検討を行う。また、高Q値を得ることが可能な構造として、Whispering gallery modes (WGM'S)を利用したリング共振器や、ダイヤモンド基板上に周期的な構造を作製したフォトニック結晶についての検討をシミュレーションを用いて行う。 共振器の加工に関し、高品質なバルクダイヤモンドやダイヤモンド薄膜の準備を検討する。また、高精細集束イオンビーム装置を用いた加工の予備実験を行うため、バルクダイヤモンド上に微細構造を作製し、研究室所有の原子間力顕微鏡を用いて加工条件の探索を行う。 さらに、シミュレーションによって得られた結果をもとに、高精細集束イオンビーム装置を用いて、ダイヤモンド共振器の加工を行う。 これらに加え、ダイヤモンド共振器のQ値を評価するためのシステムの構築を行う。具体的には、光源に波長可変レーザーを用い、レーザーの波長を走査しながらダイヤモンド微小共振器に光を入力し、透過光を強度を測定する。これにより、分光器では実現できない分解能でスペクトルを評価することが出来る。そして、構築した装置を用いて、作製したダイヤモンド共振器の評価を行う。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画では、時間領域差分(FDTD)法の計算を行うため、シミュレーションソフトウエアを購入する予定であった。しかし、既存のソフトウエアを利用しても計算が可能なことがわかり、購入を中止した。また、高精細集束イオンビーム装置は利用限度額が決まっており、平成28年度は本研究課題で支払を行う必要がなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
作製したダイヤモンド共振器を簡易に評価するため、分光器、ならびに、制御用のコンピューターの購入を検討する。また、情報収集のため、国際学会への参加を検討する。
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