2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K04923
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
工藤 寛之 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (70329118)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶原 利一 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (60356772)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 生体計測 / バイオマイクロシステム / 電気化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は脳内成分の空間的・時間的な変化をモニタリングする新しいマイクロフロー計測技術に必要なセンサデバイスの特性向上と、生体試料サンプルの評価を行った。 (1)センサデバイスの開発では、オスミウム錯体をメディエータとして用い、西洋わさび由来ペルオキシダーゼによって酸化酵素の反応生成物である過酸化水素の分解を電気化学的に計測する、酵素センサを開発した。本センサの特長は一つのカウンター電極並びに参照電極と、二つの同一形状を有する作用電極を1チップ上に集積化し、片方の作用電極にのみ酸化酵素を固定化した。両作用電極の出力差を計測する事で、酵素反応以外の夾雑物による影響(分泌成分に由来するノイズ)を打ち消すことが可能である。 (2)樹脂製のスタンプ表面に酵素溶液を浸潤させ、電極上に転写する酵素スタンプ式固定化法を開発し、乳酸センサに応用した。スタンプ材料の最適化を行ったところ、メラミン樹脂製のスタンプが酵素スタンプに適していることが確認され、本手法を用いて作製したセンサは応答速度が従来法の約60秒から8秒へと向上し、リアルタイムでの脳内乳酸計測に適していることが示された。 (3)流路系の改善では、従来PDMS製のフローチャネルをスクリーン印刷にて形成した電極上に直接貼り付けていたが、電極とPDMSの間に中間層としてPVC製のレイヤーを形成することで、電極近傍におけるキャリアフローの滞留やリークが解消され、上記応答速度の向上に資することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究計画はほぼ計画通りに実施できており、研究自体の進捗、成果発表ともに順調である。 順調に進捗しているとして判断した理由として、当初計画していた (1)スタンプを用いた酵素固定化法が生体計測に利用できることを確認し、学会発表・論文等でその成果の報告に至ったこと。 (2)流路形成法の改善により、システムの応答性が向上し、時間分解能の向上に寄与していること。 (3)上記で改良を進めたシステムを生体試料のモニタリングに応用できることが確認されたこと の三点があげられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年以降も引き続き研究実施計画に従って開発を進める予定である。 センサの改良では、乳酸、グルコースに加えて脳内の神経伝達物質として知られ、睡眠・覚醒や摂食行動などの生理機能と関連が知られているヒスタミンの計測に応用する。ジアミンオキシダーゼはヒスタミンを酸化触媒することが知られており、本センサのプラットフォームにジアミンオキシダーゼを固定化することで実現できると考えられる。 また開発したシステムを用いて、脳標本の代謝を調べる実験を行う。この時、本システムの特性を活かして、標本に投入する薬剤の濃度を変化させ、それに対する応答をリアルタイム計測する。 また本研究成果は医療や日常の健康づくりなど、さまざまな分野に発展させ、利用することが可能である。順調に進捗した場合、これらの応用についても基礎的な検討や可能性の評価を行う予定である。具体的には、本システムの個体レベルの生体計測への応用展開についても検討を行う。同様のセンサシステムを人の皮膚表面に張り付けることで、汗中成分のモニタリングに応用する。汗中成分の評価はこれまでにも活発に行われているが、発汗量の不安定さやサンプリングの難しさから、採取した汗の分析が広く行われているのに対してリアルタイムにモニタリングする技術の開発はまさに生体計測分野でのトレンドとなっている。
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Causes of Carryover |
本研究計画では内定通知を受けたのが10月であったため、実施期間が計画より短かった。このため、研究計画の進捗への影響が小さい一部の実験は次年度に繰り越すこととした。具体的には、作動出力によるノイズキャンセルの評価をリアルタイム計測で行う、等の実験を検討していたが平成29年度の課題とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度の早期に上記の実験等を実施するとともに、その成果発表にも充てる予定である。
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