2016 Fiscal Year Research-status Report
積層結晶構造を利用した新規磁気トンネル接合材料の開発
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16K04925
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
神島 謙二 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20321747)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 結晶工学 / 応用物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
非磁性ブロック・非磁性絶縁障壁を導入した積層構造六方晶フェライトの作製を試みた。具体的には、RブロックとSブロックの交互積層構造をとるM型フェライトに対し、Ti4+イオンおよびMg2+イオンの導入を試みた。試料の組成および焼成温度をコントロールすることにより、積層結晶構造単相の生成条件を探索した。原料としてBaCO3, α-Fe2O3, MgO, TiO2を用いて、目的の化学量論組成になるように秤量した。これらを湿式混合した原料粉を900℃で仮焼成した。仮焼成後、遊星ボールミルで粉砕し、加圧成形し、1100~1400℃で5時間本焼成した。試料の結晶構造をX線回折(XRD)によって同定した。 その結果、広い範囲でのMg, Ti置換したM型フェライトの作製に成功し、置換によるキュリー点の変化を観測した。これは系統立って非磁性イオンを導入することに成功したことを示している。 また、高濃度の非磁性イオンを導入するのに際し、異相も生成した。これより、積層結晶構造単相が生成するためには、母物質と化学量論が異なっていることが判明した。この組成をコントロールすることにより、異相の生成を抑え、単相にすることに成功した。以上より絶縁障壁となる非磁性ブロックの構成要素となる、非磁性イオンを注入した積層構造試料の作製に成功した。 また、その周辺物質の探索も行い、Ca系六方晶フェライト材料の作製にも成功した。このような物質探索は、新材料開発研究の礎石となるものであり、重要なものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非磁性イオンを注入した積層構造試料の作製に成功したため、順調に進展していると判断する。実際、非磁性イオンを注入したら結晶構造が崩れてしまうことが多々ある。そのような中、結晶構造を維持する組成条件を見出した。これは本研究の主眼である絶縁障壁となる非磁性ブロックの形成に必要不可欠である。 また、これに対し、導電層になる二価鉄スピネルブロックを如何に導入していくかが次の課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度で探索した非磁性イオン注入積層結晶構造試料の実験で探索した作製条件を出発点とし、導電層になる二価鉄スピネルブロックの導入を目論む。ゴム・プラスチック以外のすべての試料を粉砕できる遊星型ボールミルを利用し、原料試薬粉末をナノサイズまで粉砕する。その上で固相反応させることにより、良質な強磁性積層構造試料の作製を試みる。初年度と同様に、作製した試料について、X線回折実験ならびに磁気測定を行うことにより、強磁性試料生成の最適条件の探索を行う。また、理化学研究所(埼玉県和光市)に出張し、EPMA分析で組成を確認する。
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