2016 Fiscal Year Research-status Report
ヘテロ元素ドープ炭素スピン材料のボトムアップ合成法の開発
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16K04926
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
本多 善太郎 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (30332563)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 炭素材料 / フタロシアニンシート / ナノグラファイト |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクトでは金属錯体、有機分子をビルディングブロックとしたボトムアップ型反応により様々なヘテロ元素ドープ炭素が合成可能な方法の確立を目指している。本年度は窒素及び遷移金属(銅)を炭素中にドープすることを目指し、以下2つのボトムアップ反応を研究した。 1.オクタシアノ銅フタロシアニン(銅含有金属錯体)をビルディングブロックとした金属(銅)ドープ炭素の合成 2.テトラクロロフタロニトリル(窒素含有有機化合物)ビルディングブロックとアルカリ金属のウルツ反応による窒素ドープ炭素の合成 1.においては反応温度、添加剤を検討することにより高品質な銅フタロシアニンシートが生成することを明らかにした。フタロシアニンシートはフタロシアニンがベンゼン環を共有して重合した2次元炭素物質であり、均一分散した金属を含むことからスピントロニクス材料としての応用が期待される。本年度の研究により高品質なフタロシアニンシートを大量合成できる方法を確立した。さらに、X線回折法、透過型電子顕微鏡により反応生成物の構造解析を行った結果、フタロシアニン中心に金属と空孔が交互に配置した新しい型のフタロシアニンシートを発見した。これらの研究成果はAppl. Phys. Lett誌に投稿、掲載された。 2.ではウルツ反応の結果、黒色の反応生成物が得られた。X線光電子分光法により反応生成物の組成を調べたところ、窒素が多量にドープされたナノグラファイトであることを明らかにした。この窒素ドープナノグラファイトは磁性元素を含んでいないにもかかわらず、弱い常磁性を示した。電子顕微鏡を用いて試料の構造を調査したところ、試料中にグラファイトエッジ、空孔が多く存在することが示唆された。グラファイトのエッジ、空孔には磁気モーメントが生じることが予想されており、本試料の磁性源となっている可能性がある。本研究成果は応用物理学会において報告された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画では金属錯体、有機分子をビルディングブロックとしたボトムアップ型反応により様々なヘテロ元素ドープ炭素物質を合成することを目標としている。前述の通り今年度は1.金属ドープ炭素及び2.窒素ドープ炭素の合成を試み、以下の項目を達成した。 1.オクタシアノ銅フタロシアニンをビルディングブロックとしたボトムアップ型反応により、均一分散した遷移金属を含む2次元炭素物質であるフタロシアニンシートの合成に成功した。その際、反応温度、原料混合比、添加物等の調査を行い、高品質なフタロシアニンシートが生成する反応条件を明らかにした。さらにX線構造解析、透過型電子顕微鏡により構造解析を行い、フタロシアニンシートの構造を綿密に調査し、構造を明らかにした。2.窒素ドープ炭素物質を得ることを目的に窒素含有有機化合物であるテトラクロロフタロニトリルをビルディングブロックに選定し、アルカリ金属との反応を試みた。反応温度、反応時間、原料混合比の検討を行った結果、とアルカリ金属のウルツ反応により窒素を多量に含んだナノグラファイトの合成に成功した。更にX線回折、透過型電子顕微鏡、X線光電子分光法による組成、構造解析、を行い、空孔の多いナノグラファイト構造を明らかにした。 以上の研究により、当初の研究目標を達成した。さらに、研究計画を前倒しし、窒素ドープナノグラファイトの磁気特性の評価を行い、その磁性解明を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度の研究成果に引き続き以下の研究を推進する。 1.オクタシアノフタロシアニン(金属錯体)をビルディングブロックとした金属(遷移金属)ドープ炭素の合成 H28年度は銅を含む2次元炭素物質フタロシアニンシートの合成に成功した。各種遷移金属フタロシアニンシートは強磁性、反強磁性など様々な磁性を示すことが理論的に予想されており、興味がもたれる。そこで昨年度合成した銅フタロシアニンシートの磁気測定を行い、磁性を解明する。さらに、フタロシアニンシートに銅以外の遷移金属(マンガン、鉄、コバルト)を導入することを目指す。まず、ボトムアップ反応の原料となる各種遷移金属オクタシアノフタロシアニンを合成し、質量分析法により同定する。次にボトムアップ反応により各種遷移金属フタロシアニンシートの合成を試みる。その際、反応条件の検討を行い、X線回折法、透過型電子顕微鏡等により各種試料のシート構造の同定を試みる。 2.窒素ドープナノグラファイトの合成 前年度に引き続き、窒素ドープグラファイトの磁気測定を行い、各種試料の反応条件と磁性の関係を調査する。カップリング材をアルカリ金属から遷移金属(マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅)に変更し、ウルツ反応により遷移金属をドープした磁性炭素材料の合成を試みる。合成後の各種試料をX線回折法、X線光電子分光法により同定し、磁気測定により磁性源の導入の有無を検証する。さらに本合成方法のビルディングブロックにメラミン(窒素含有有機化合物)を用いることで、炭素と窒素が周期的に配置した2次元炭素物質(グラファイト型窒化炭素)の合成を試みる。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Crystal structures and magnetic properties of the honeycomb-lattice antiferromagnet M2(pymca)3(ClO4), (M = Fe, Co, Ni)2016
Author(s)
Z. Honda, T. Kodama, M. Hagiwara, T. Kida, A. Okutani, M. Sakai, T. Fukuda, N. Kamata
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Journal Title
SOLID STATE SCIENCES
Volume: 59
Pages: 15-18
DOI
Peer Reviewed
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