2018 Fiscal Year Research-status Report
マイクロパターン配向処理による新規な双安定型液晶デバイスの開発
Project/Area Number |
16K04934
|
Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
本間 道則 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (90325944)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 液晶 / 双安定 / マイクロラビング |
Outline of Annual Research Achievements |
双安定マイクロパターン液晶セルにおける色相スイッチング特性の向上のために,液晶セルの透過光側に位相板を挿入した構成について考察した。ここで,位相板としてホモジニアス液晶セル(液晶:E170,メルク)を用い,電圧の印加によってリタデーションを変化させた。液晶層の厚みがコントラストに与える影響を考察するために,厚みが異なる複数の評価素子を作製したが,12μm程度の厚みにおいてのみ双安定性が得られた。そのため本研究では,液晶層の厚みを12μmに固定し色相のコントラストの定量評価を行った。色相の定量評価においては,CCDカメラを組み合わせた偏光顕微鏡により取得したカラー画像から評価値(0~360°)を求めた。まず,位相板の光学軸(ホモジニアス液晶セルのラビング方向)の角度が色相のコントラストに与える影響について調査した結果,ラビング方向がマイクロパターンの格子ベクトルに平行な場合よりも,垂直な場合の方が色相のコントラストが高くなることを確認した。次に,ラビング方向を格子ベクトルに垂直な方向に固定し,ホモジニアス液晶セルの印加電圧によってリタデーションを変化させ,偏光顕微鏡画像(クロスニコル)の測定を行った。画像解析により色相と印加電圧の関係を求めたところ,印加電圧の増加とともに色相に周期的な増減が見られ,安定状態および準安定状態における色相の差を求めたところ1.4Vにおいて151°,2.0Vにおいて144°という大きな値が得られた。さらに,パラレルニコルにおける色相の差についても定量評価を行ったところ1.6Vにおいて68°,1.9Vにおいて87°という値が得られ,クロスニコルにおける値を大幅に下回った。これにより,偏光板の角度もまたコントラストを改善する上で重要なパラメータであることが確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では,双安定マイクロパターン液晶セルにおける色相スイッチング特性の向上のために以下の3つの考察課題を設定していた。(1)液晶セルにおける液晶層の厚みおよび液晶の複屈折,(2)位相板のリタデーションおよび光学軸の角度,(3)偏光板(ポーラライザとアナライザ)の透過軸の角度が色相のコントラストに与える影響の考察。これらの考察課題のうち,本研究では(2)および(3)について実験により考察がなされ,位相板のリタデーションや光学軸の角度,および偏光板の透過軸の角度が色相のコントラストに大きな影響を与えることが定量的に示され,良好な表示特性を有する双安定表示素子の実現に向けた有意義な知見を得ることができた。一方,色相のコントラストが最大となるような各々のパラメータの最適化については完了には至らなかった。以上を総合的に考慮すると,当初の計画通りすべて順調に進展しているとは言い難いがおおむね順調に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度に引き続き,双安定マイクロパターン液晶セルの透過光の色相のコントラストが最大となるようなパラメータの最適化を行い,色相のコントラストの更なる改善を目指す。ここで,最適化のパラメータは(1)位相板のリタデーションおよび光学軸の角度および(2)偏光板の透過軸の角度とする。また,従来の加熱による相転移プロセスを利用した双安定スイッチングとは異なり,電圧印加のみによる双安定スイッチングの実現を目指す。そのために,種々の電圧印加条件と得られる液晶分子配向状態との関係を実験により詳細に調査し,電圧印加のみによる双安定スイッチングのスキームを構築する。
|
Causes of Carryover |
平成30年度の研究では双安定性を有するマイクロパターン配向液晶セルの色相のコントラストの向上について実験により考察を行ったが,色相のコントラストを最大化するためのパラメータの最適化には至らなかったたため,今年度も引き続き最適化の検討を行う。また,電圧の印加プロセスによる安定状態と準安定状態のスイッチングについての考察を併せて行う。従来よりも良好なカラースイッチング性能が得られる可能性があり,研究期間を延長し,国際学会において成果を公表する予定である。
|
Research Products
(3 results)