2017 Fiscal Year Research-status Report
酸化タングステン薄膜の構造制御エピタキシャル成膜と超高感度バイオセンサへの応用
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16K04936
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
矢野 満明 大阪工業大学, 工学部, 教授 (40200563)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 一歩 大阪工業大学, 工学部, 教授 (40351457)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 三酸化タングステン / エピタキシャル成長 / 結晶構造 / プロトンの注入と注出 / 電気特性の変化 / 光学特性の変化 / バイオセンサ / ガスセンサ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、結晶構造と面方位を制御して酸化タングステン薄膜を作製する成膜技術を開発し、酵素反応で生成するプロトンの注入による導電率変調で溶液中の特定化学物質を検出するバイオセンサや、吸着ガスとの電荷移動にともなう導電率変調で大気中の特定化学物質を検出するガスセンサを実現する事である。平成29年度は次の研究項目を実施した。 1.結晶構造と面方位を制御した酸化タングステン薄膜の作製に関しては、酸化タングステンのチャンク結晶と酸素ラジカルをソースとした分線エピタキシャル成長で、r面サファイアを基板として(001)配向monoclinic構造膜を、LSATを基板として(100)配向orthorhombic構造膜を得ることができた。 2.r面サファイア基板上の(001)配向monoclinic構造酸化タングステン膜について、希薄硫酸水溶液を用いたエレクトロクロミック特性を調べ、プロトンの注入・注出にともなう光学特性、電気特性の変化を、結晶構造の変化と関連付けて系統的に明らかにした。 3.酸化物半導体表面に酵素を高密度かつ水溶液中で脱離しないように固定化する方法として、シルクフィブロイン膜に包摂固定化する方法と、長鎖アミノシランカップリング剤を用いて結合する方法を新たに開発し、その有効性を確認した。 4.低コストで量産性に優れたゾル・ゲル法で(100)配向orthorombic構造酸化タングステン多結晶膜を作製する技術を開発し、ガスセンサとしての特性評価に着手した。なお、当項目は当初計画には無かったが課題達成のため追加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿って研究が進んでおり、成果も順調に得られている。基板結晶の選択で酸化タングステンエピタキシャル膜の結晶構造と配向性を制御できることを実証し、格子不整合率の小さなLSAT基板を用いれば、格子緩和が始まる前の極薄膜でバルク結晶の10倍を超えるキャリア移動度が得られることを見出した。酸化タングステン膜のエレクトロクロミック特性を解析し、プロトンの注入・注出による結晶構造変化と光学的・電気的特性の関係を明らかにした。また、バイオセンサに不可欠な酵素固定化技術の高度化を図り、高密度の酵素を強固に固定化する方法を開発した。さらに、ゾル・ゲル法で多結晶酸化タングステン膜を作製し、ガスセンサとしての特性評価に着手した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に得た成果を基に、酸化タングステン薄膜作製技術の精密化を図って結晶構造と方位を制御した高品位薄膜を実現するとともに、酵素を固定化したバイオセンサとしての実験を実施する。併せてガスセンサとしての特性評価も行い、酸化タングステン膜のセンサ応用に関する研究を加速させる。次年度が研究の最終年度となるため、これまでの研究成果をまとめて、学会発表や論文発表として積極的に公開する。
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Causes of Carryover |
理由:次年度使用額が発生した主要な原因は物品費である。これは、次年度の研究経費が切迫することが予想されたため、次年度使用額を増やす目的で、材料・薬品の一部を本年度に大学から配分された研究経費で賄った結果である。 使用計画:次年度の研究遂行に必要な物品(消耗品)、研究委成果の発表に必要な旅費・会議参加費、専門的知識・技術の提供を受ける際に必要な謝金として執行する。
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