2017 Fiscal Year Research-status Report
水溶性CIS系半導体ナノ粒子における多励起子生成ダイナミクスの観測
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16K04938
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Research Institution | Nippon Bunri University |
Principal Investigator |
市田 秀樹 日本文理大学, 工学部, 特任准教授 (50379129)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 半導体ナノ粒子 / 超短パルス / 分光計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近年、新たな太陽電池の材料として着目されているCIS系半導体ナノ粒子において、多励起子生成ダイナミクスを解明することで、光電変換効率のさらなる向上にむけた指針を得ることを目指している。前年度の平成28年度においては、主にCIS系半導体ナノ粒子の光応答性と光応答ダイナミクス測定のために必要な光源開発を行った。その成果をうけて、平成29年度では、以下の項目を実施した。 (1)CIS系半導体ナノ粒子については、可視光領域で高い吸収係数を有し、近赤外領域で発光するCuInS2ナノ粒子に着目し、その発光ダイナミクスについて観測した。まず、極低温領域の発光スペクトルの励起光強度依存性、発光強度の減衰時間の発光エネルギー依存性の測定結果から、発光メカニズムとして、CuInS2ナノ粒子内のドナー・アクセプタペアによる発光であると結論づけた。また、室温から極低温領域までのCuInS2ナノ粒子の発光強度については、室温における発光強度が極低温(15 K)のそれの4%にとどまること、発光強度の平均減衰時間が、極低温領域から室温へかけて早くなることから、無輻射遷移が室温の発光プロセスにおいて大きな影響を与えていることが分かった。 そこで、発光強度および発光減衰時間の温度依存性を解析することにより、発表プロセスは、熱活性化型の無輻射遷移を考慮することにより、定量的に説明出来ることが分かった。 (2)光応答ダイナミクス計測のためのシステム作りにおいては、光源の元となる超短パルスファイバレーザー、光アンプファイバ、Supercontinuum光発生のためのPhotonic Crystal Fiberの導入など、システム構築にむけての整備を行った。その結果、800nm~1300nmにわたるSupercontinuum光発生に至っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で着目している水溶性CIS系の半導体ナノ粒子の試料作製やその構造、光学的な評価については、ほぼ予定どおりの進捗を示しているが、量子効率をいかに向上させるか、特に太陽電池への応用を見据えたばあい、高温での無輻射過程の抑制について、検討の課題として上がってきた。無輻射過程は、本研究で着目している多励起子生成においても、大きな影響を与えるため、今後の本研究における重要な検討課題としたい。また、光応答ダイナミクス計測のためのシステム構築においては、構成要素の見直しなどを行い、予算の範囲内で、Supercontinuum光発生まで達成している。水溶性CIS系の半導体ナノ粒子の光応答ダイナミクス計測にむけたシステムの最適化などが必要な状況にある。上記の理由から、研究全体の進捗状況の評価を「(3)やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成30年度は、平成29年度まで連携研究者であった者を研究分担者として加え、やや遅れている研究の進捗を着実に進める。前年度(平成29年度)の研究内容において明らかとなった水溶性CIS系の半導体ナノ粒子の無輻射再結合過程は、本研究で着目している多励起子生成にたいして大きな影響を与えることから、研究の実施項目として追加し、水溶性CIS系の半導体ナノ粒子の無輻射再掲都合過程に関して、構造や試料作製方法の観点から研究を進める。その上で、水溶性CIS系半導体ナノ粒子の3次元配列構造の試料作製や評価を行っていく。一方、光応答ダイナミクス計測のためのシステム構築においては、試料構造に合わせながらその構成に調整を入れながら、システム全体の検討を行いながら、採取的に目的達成に向けた課題を実施していく。
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