2017 Fiscal Year Research-status Report
グラフェン/SiC表面及び界面におけるイオン液体分子の挙動制御技術の開拓
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16K04939
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Research Institution | Ube National College of Technology |
Principal Investigator |
碇 智徳 宇部工業高等専門学校, 電気工学科, 教授 (40419619)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 正路 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (60264131)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 表面・界面物性 / グラフェン / SiC / 準安定原子誘起電子分光法 / イオン液体 |
Outline of Annual Research Achievements |
液体-気体(真空)界面(表面)或いは固体-液体界面におけるイオン液体(IL)分子に関する新たな物理を確立するという最終的な目的を達成するために、平成29年度は(1)観測環境整備と(2)不活性表面における最表面の電荷制御と(3)活性表面におけるIL分子挙動の観測の事前研究に取り組んだ。 (1)観測環境整備は、平成28年度からの継続的な課題であった有機材料用蒸着源を購入し、試料準備室の製作を行った。蒸着源は、2種類のイオン液体を格納できる坩堝があり、それぞれを温度制御できることから、同時に或いは個別に蒸着することができる。そのため、固体(基板)-液体或いは液体-気体界面だけでなく、異なる液体間の状態も調べることができるシステムを構築できた。また、試料を準備室から超高真空環境下である測定室へ輸送できるようにホルダーを製作した。 (2)異種原子吸着或いは挿入による不活性表面(グラフェン/SiC)での最表面における電荷状態の制御を目指した。異種原子として水素(H)と酸素(O)を選び、それぞれをガス或いは原子状態でグラフェン層を形成したSiC表面に導入し、表面構造を低速電子線回折(LEED)により観察し、電子状態を準安定原子誘起電子分光法(MIES)や反射電子エネルギー損失分光法(REELS)等で観測した。また、異種原子の吸着或いは挿入において、触媒効果をもたらすアルカリ金属(Cs, K)を前吸着し、酸素を導入することによる表面電荷状態の制御についても試みた。 (3)活性表面におけるIL分子挙動を調べるための事前研究として、(1×1), (3×3), (√3×√3)構造といったSiC再構成表面に対して、それぞれの異種原子を吸着し、構造及び電子状態的見地からの評価を行った。その結果、表面の水素化或いは酸化による表面電荷状態の制御の可能性を掴めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
次世代エネルギー貯蔵デバイス開発への貢献のために、グラフェン表面上のイオン液体(IL)分子の振る舞いと電荷輸送について、電子状態的見地から解明し、液体-気体(真空)界面(表面)或いは固体-液体界面におけるイオン液体(IL)分子に関する新たな物理の確立を目的としている。申請当初に計画していた平成29年度の内容は、平成28年度の計画からの継続である(1)不活性表面における最表面の電荷制御と平成30年度の計画にまたがって実施する(2)活性表面におけるIL分子挙動の観測及び(3)密度汎関数法による電子状態と電荷密度分布の理論計算であった。但し、平成28年度に計画していた装置開発{試料準備(IL及びSi蒸着)室の製作}が、IL蒸着に必要な有機材料用蒸着源の設計に非常に時間を要したことから設置できなかったため、平成29年度に購入し、自作の試料ホルダー等を装備して試料準備室の完成に至った。 (1)不活性表面における最表面の電荷制御については順調に進んでおり、一連の実験を終え、研究実績の概要に記したように、その結果を学会で発表している。現在、これらの結果をまとめて論文投稿のための準備を進めている。 (2)活性表面におけるIL分子挙動の観測及び(3)理論計算については、装置開発を終えた段階であり、IL蒸着に至っておらず、IL分子挙動に関する検討ができていないため、若干の遅れを感じている。しかし、(2)の事前研究として(1)で行った異種原子吸着或いは挿入をSiC基板上で形成した各種再構成表面において実施し、構造及び電子状態の観測ができていることからも、予備的な実験を進めることができている。 以上のことから、それぞれの状況を鑑みてやや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度には、引き続き(2)活性表面におけるIL分子挙動の観測及び(3)密度汎関数法による電子状態と電荷密度分布の理論計算を行い、(4)(1)で形成した不活性表面におけるIL分子挙動の観測に取組む。これまでの研究で、基盤となる最表面状態の構造及び電子状態の制御に関する知見を得ることができている。これらを基礎として、各表面に対してIL分子を1分子層以下の非常に低い蒸着レートから液滴程度の蒸着量までを正確に制御し、液体-気体(真空)界面(表面)或いは固体-液体界面におけるイオン液体(IL)分子挙動に関する物理の確立を目指す。 (2)活性表面におけるIL分子挙動の観測では、(1×1), (3×3), (√3×√3)構造といった複数の再構成表面を対象とし、表面構造とIL分子間の相関について明らかにすることと蒸着量における分子間相互作用の優位性について検討する。(4)不活性表面におけるIL分子挙動の観測では、表面電荷の有無による二次元的なIL分子の吸着状態或いは表面垂直方向への分子膜成長に与える影響について調べることで、表面電荷とIL分子間の相関を明らかにする。(2)と(4)の実験結果を検討する上で、(3)密度汎関数法による電子状態と電荷密度分布の理論計算を行い、IL分子挙動に関する構造的なモデルの提案までを期待している。 研究を遂行する上での課題としては、IL分子層の膜圧の評価が挙げられるが、水晶振動子を備えた膜圧評価とMIESや紫外光電子分光法UPS等の各種電子分光による分子層の見積により解決できると考えている。 昨年末にもドイツの研究協力者と議論の場を設け、進捗状況の報告を行っている。今年度については、より緊密に情報共有を図り、研究協力者の所有しているX線光電子分光法(XPS)等による測定環境を利用し、議論しながら研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) 平成29年度末に準安定原子生成源の排気機構のコールドトラップで使用するために液体窒素を購入予定であったが、実験装置の構成を変更したことから、次年度での使用とすることとしたため、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 平成29年度末に実験装置の構成を完遂したことから、平成30年度に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)