2016 Fiscal Year Research-status Report
オットー光学配置を利用したペーパープラズモニックセンサの構築
Project/Area Number |
16K04940
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
福田 伸子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, フレキシブルエレクトロニクス研究センター, 主任研究員 (90360635)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 紙 / 表面プラズモン共鳴 / センサ / オットー配置 |
Outline of Annual Research Achievements |
紙の上に堆積された金表面をプラズモン場とするOtto光学配置の形成により、表面プラズモン共鳴を観測することに成功した。金は真空蒸着法によって紙の上に堆積された。測定は、ガラスプリズムと紙の間に1マイクロメートル以下のギャップが存在する状態で、633nmのp偏光を全反射条件でプリズム側から入射し、それに対する反射光を計測することにより行われた。その結果、表面プラズモン共鳴発現時に特徴的な楔形の波形を有する、反射率分散カーブを得ることができた。紙表面のラフネスは、プラズモン特性の発現において重要なファクターであり、なるべくラフネスが小さくなるような塗工紙が基材として好ましい。加えて、金の蒸着速度や紙の表面自由エネルギーといったパラメータも、堆積される金のグレインサイズを決定付け、表面プラズモン共鳴の発現に関わる重要なファクターであることが分かった。一般的な市販の塗工紙の場合、蒸着速度が遅くなるにつれて金のグレインサイズが大きくなり、反射率分散のディップ波形が鋭くなる。一般的に基材として使用されるガラス表面に比べ、紙のラフネスの大きさは不利に働くが、金属の堆積速度の制御によって大きいラフネスという不利な点をある程度補うことができることが分かった。紙を基材に用いるプラズモンセンシングの試験として、ギャップのメディアを空気から水に置換したところ、反射率分散カーブにおける共鳴角が屈折率の増加に応じて高角度側にシフトすることを確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画書に記載の通り、誘電体メディア層としての非常に狭いギャップ層像乳によるOtto光学配置の形成や紙上へ堆積した金属表面での表面プラズモン共鳴発現に成功している。また、多くの種類の紙で実験を行い、そのなかから表面プラズモン共鳴の発現が可能な紙の種類を抽出することができた。加えて、金属の蒸着速度や紙のみかけの表面自由エネルギー値と得られる金属表面状態の相関性に関する検討を行うことができている。一方、紙の平滑性を担保できるようなコーティングについては、予想に反し、塗工紙に施されている紙へのコーティングが多種多様であり、非常に平滑性の高いものが存在していることが分かったので、今後は必要に応じて行う程度とする。また、金属層の印刷に関しては、現状、一般的な印刷用金属インクに有機物の含有が多いので、伝搬型の表面プラズモン共鳴の発現は確認できなかったが、紙表面の帯電処理および印刷後の熱処理によって、局在型のプラズモン共鳴による発色が確認された。伝搬型と局在型のプラズモン共鳴が結合するような系を蒸着と印刷を利用して設計できる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
紙上に堆積されたプラズモン場としての金属表面に機能性分子の化学修飾を行い、タンパク質などのセンシングを実証する。また、本年度の研究途上ではOtto配置で得られるような伝搬型プラズモンの他に、金属堆積量を制御したり、金属インクを適切な量印刷することで局在型モードの表面プラズモン共鳴も観測することができた。紙ベースのオプティカルセンサの可能性という観点からも、伝搬型のみならず局在型のモードも検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
予想よりも若干低い金額で必要な物品を購入したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
基材の紙の購入費として使用を予定している。
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