2017 Fiscal Year Research-status Report
オットー光学配置を利用したペーパープラズモニックセンサの構築
Project/Area Number |
16K04940
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
福田 伸子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, フレキシブルエレクトロニクス研究センター, 主任研究員 (90360635)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 表面プラズモン / センサ / オットー光学配置 / 局在型表面プラズモン |
Outline of Annual Research Achievements |
コート紙の上に堆積した金の表面をプラズモン共鳴場とするOtto光学配置において、タンパク質の特異吸着を検出することに成功した。プラズモン共鳴場でセンシングを行うには、伝搬長を長くし、反射率の入射角分散で現れるディップの半値幅を小さくさせる必要がある。昨年度の検討で、コート紙上への金の蒸着速度が小さいほど、堆積される金のグレインサイズが大きくなり、ラフネスも小さくできることを明らかにした。そこで、低ラフネスの金表面を必要とするため、0.01 nm/sの低堆積速度でコート紙の上に金を真空蒸着した。検出ターゲットのタンパク質モデルであるストレプトアビジンを用いるため、これと特異吸着するビオチンを末端とする分子を紙上の金表面に化学修飾し、これをセンサシートとした。 まず、センサシートを構築したOtto光学系にセットし、反射率の入射角分散測定を行った。金に無修飾の場合のプラズモン共鳴角との変化量は、明確に検出することが出来なかった。ビオチン修飾分子の膜厚が平均的に1 nm以下と想定され、ラフネスが大きめな紙上の金表面では、この程度の膜厚の有機膜の吸着・結合は、検出が困難であることが示された。次に、リン酸緩衝液中にストレプトアビジンを分散した液をセンサシート上に曝露し2時間静置した後、水でリンスし、再び反射率の入射角分散測定を行ったところ、プラズモン共鳴角が高角度側にシフトした。これは、ビオチンにストレプトアビジンが吸着したために、センサシート金表面の誘電率が変わったため、プラズモン共鳴条件が変化したことを示す。本研究の系では、53 kDa程度のサイズのタンパク質の検出は可能であることが示された。 一方、紙上への金堆積時を細かく検証している段階で、10 nm以下の金の堆積時に局在プラズモン共鳴による発色が確認されており、この局在モードでのセンシングも次年度以降に検討したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
紙を基材としたOtto光学配置用のセンサシートがタンパク質のセンシングをできる程度の感度を担保できることは明らかにした。また、紙の特性を生かした折り曲げ流路の作製とセンシング時に流路の使用を試みた。金が堆積されている部分を折り曲げると、金が剥離するコトが分かった。そこで、金が堆積されていない部分だけ折り曲げて流路を作製し、センシングを行う際に使用する液体の導入することができた。また、センサシート裏面から注射器の針を刺してそのまま液体注入をすることも可能であり、この方法はガラスなど硬質基材では不可能な方法で、非常に簡便である。
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Strategy for Future Research Activity |
紙上への金パターンニングによるセンサシートの形成とCCDカメラを利用したセンシングのイメージングに挑戦する。一方、紙上への金蒸着時に、膜厚計換算で10 nm以下の堆積を行った場合、一様に堆積されていた金が時間を置くと、あたかも弾いたかのようにグレインを形成し、局在プラズモン共鳴による発色を示すことが明らかになった。この金のマイグレーション現象は、紙の表面自由エネルギーやラフネスが関係して起こるものと考えられる。この現象を利用した局在型プラズモンモードを利用したバイオ・ケミカルセンシングも可能であることが想定できるので、今後は現象の詳細も解明していきたい。
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Causes of Carryover |
参加を予定していた国際学会に参加することが出来なかったので、次年度使用額が生じた。一方で、次年度は、金堆積表面で起こる金マイグレーションの解明を行うため、AFM表面観察を数多くする必要が出てきたので、表面観察用のカンチレバーと加熱ステージ用冶具の作製に使用する予定である。
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