2016 Fiscal Year Research-status Report
高硬度アモルファス窒化炭素薄膜の形成と薄膜堆積メカニズムの解明
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16K04958
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 治彦 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (70201928)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アモルファス窒化炭素 / 構造解析 / XPS / 元素分析 / 結合解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
アモルファアス窒化炭素(a-CNx)薄膜は高硬度コーティング材料の候補として期待されている。その理由はC-N単結合の距離(0.147 nm)がsp3C-C結合の距離(0.154 nm)よりも短く、いわゆるDLC(ダイヤモンド様炭素)より高密度の構造を形成できると予想されていることである。それらを実際に合成する場合、窒素含有率([N]/([N]+[C])比)を理論値(0.57)にできるだけ近づける工夫が必要である。また実際に合成された高窒素含有薄膜の結合状態、特にN原子の結合がどのようなものであるか、未解明であった。本年度はそのような研究の進捗状況に鑑み、高[N]/([N]+[C])比を有する薄膜の合成とその構造解析を重点的に実施した。実験にはマイクロ波または高周波プラズマCVD装置を用い、0.1 Torr程度の窒素ガス中に5-10 mTorrの有機化合物蒸気(CH3CNまたはn-C6H14)を導入し、Si基板上に水素化されたa-CNx(a-CNx:H)薄膜を形成した。作成された膜についてXPSの広帯域掃引を行った結果、[N]/([N]+[C])比は0.32-0.49の範囲で、窒素と有機化合物の混合気体プラズマで形成されるa-CNx:H薄膜としてはほぼ最高値であった。窒素原子の400 eV付近のXPSピークについて狭帯域掃引を行い、複数のガウス関数であてはめ解析を行った結果、C-Nの二重結合と三重結合がほぼ40%と60%の割合で存在することが示された。膜のFTIRを測定したところ、2700 cm-1付近のC-H伸縮振動は観測されず、3300 cm-1付近のN-H伸縮振動が強く観測された。このことから、H原子は主にN-Hの結合を形成すると結論された。以上の成果は平成29年8月開催予定の国際会議IUMRS-ICAM2017で発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、28年度に赤外半導体レーザーシステムの構築、29年度にアモルファス窒化炭素薄膜の構造解析を行う予定であった。しかし、27年度からすでに構造解析を継続して実施してきた状況と、特に高窒素含有薄膜の結合解析について関連する学会より強く要請されていた状況があった。そのため、本来は29年度に実施予定としていたアモルファス窒化炭素の構造解析を前倒しとし、28年度実施予定のシステム構築はロックイン増幅器の購入など、29年度の実施に向けた準備を行った。以上から、研究の実施状況としては、全体としておおむね順調に進んでいるものと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度は代表者が所属する専攻の建物について、耐震改修工事が入っており、現在は仮移転先で研究を実施している。そのため、改修工事終了までは昨年度まで実施していた薄膜の形成と構造解析を中心に進めていく予定である。改修工事が終了し、本格的に研究を再開できるのは10月初頭になるので、それ以降、以下の研究を推進する予定である。すなわち、28年度に実施予定であったレーザーシステムの構築に本格的に着手する。並行して、負高電圧パルス電源を導入し、硬質膜の形成に取り組む予定である。また今回新たに、パルス色素レーザーシステムを入手することができた。従来より用いていたシステムと同程度の性能を持つレーザー分光システムが構築できる(別予算で対応する予定)ので、従来よりも幅広くプラズマ反応解析の研究を実施できるようになる。
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Causes of Carryover |
本年度の研究計画では設備備品として、ロックイン増幅器およびメカニカルブースターポンプの購入を予定していた。当初の見積もりではそれぞれ993,600円ならびに527,000円であったが、ロックイン増幅器は値引きにより794,880円で納入され、メカニカルブースターポンプは若干排気容量を落としたものを購入したため329,400円となった。そのため、設備備品費で396,320円の節約となった。一方で、本年度は消耗品のほぼすべてを本予算で賄ったため、消耗品の増額が生じた。それらの差額が最終的に「次年度使用額」となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記「次年度使用額」は消耗品(主としてSi基板およびレーザー用色素)の購入に充てる予定である。それぞれおよそ60千円および37千円程度となる見込みである。
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